水上 治さん
(JA道北なよろ)
農家の時計

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今回の農家さん

水上治さん(JA道北なよろ)
1963年、風連(ふうれん)町(現:名寄市)生まれ。会社員と農家の兼業生活を経て、10年ほど前から専業に。2018年から、市内のアスパラガス農家で組織される「グリーンアスパラ部会」の部会長を務め、市の特産であるアスパラガスのPRにも力を注いでいます。

JA道北なよろの特産物
『グリーンアスパラガス』とは?

日本一のアスパラガスの収穫量を誇る北海道の中でも、名寄市は全道トップクラス。さらに、夏冬の寒暖の差は実に60度以上、昼夜の気温差も大きいことから、アスパラガスの甘みが強いのも特徴です。主力である露地栽培の収穫期間は、例年5月中旬~7月上旬。旬を味わえる時期は短めですが、その分おいしさもひとしお。およそ9割は、東京や大阪など道外に出荷されています。

■水上さんの1日(5月下旬の一例です)

収穫と田植えが重なり、
一年で一番忙しい時期

ハウス(収穫期は4月上旬〜5月中旬まで)と露地(5月下旬〜7月上旬まで)で作るグリーンアスパラガスのほかに、水上さんの農場では、もち米(9月下旬〜10月中旬まで)も栽培。農作業は、水上さん夫妻のほか、昨年就農した息子さんの三人で行っているそうです。ただし、アスパラガスの収穫と田植えが重なる5月下旬は一年で一番忙しく、「収穫と選別作業は市内の学生や、パートさんに手伝ってもらっています」と水上さん。「最盛期の10日間は収穫で手一杯なので、選別作業は夕食後に回します。最長で3日間寝なかったことも。今は息子が就農してくれて助かっています(笑)」

豪雪が、健康な
アスパラガスを育てる

北海道、と聞いて連想する農作物の一つに、「アスパラガス」をあげる人はきっと多いのではないでしょうか。北海道産のアスパラガスは主に5、6月から出回るので、まさに今が旬!
水上さんが暮らす名寄市は、旭川市からさらに車で北へ1時間半ほどの場所にあります。特別豪雪地帯に指定されているだけあって、北海道の中でも降雪量が多く、寒さの厳しい地域としても知られています。
私たちが訪れた5月上旬、水上さんのほ場では、ビニールハウスの中でアスパラガスがすくすくと育っていました。「ハウスの方はそろそろ終わり。露地は芽が出るのが来週くらいかなぁ」
水上さんのアスパラガス作りは、2月の除雪作業から始まるそう。特別豪雪地帯ともなると、さぞや雪に苦しめられているだろうと思いきや、これが正反対。「露地は逆に雪がほしいくらいです。雪が少なかったり、あんまり早く解けてしまうと、すぐに芽が出てしまい霜でダメになる。そうなると全滅の恐れもあるので、雪には助けられています」と水上さんは笑顔で話します。

長さを1本1本測り、
手で収穫

水上さんによると、アスパラガスは芽が出てから4、5日後には収穫できるのだそう。「天候と、ほ場の状況が良ければすぐに伸びるので、1日に3回収穫することもありますよ」とのこと。
収穫に使う鎌には目盛りが付いていて、その長さに達したものだけを1本1本手作業で刈り取っていきます。「生育にばらつきがあるため、機械化ができないんです」と水上さん。ハウス1棟の収穫量は、1日で約300kgにもなるそうで、その作業量もかなりなもの。「毎年、人手の確保に苦労していますが、名寄のアスパラを減らさないためにも、今年中に作付面積を40aほど増やす予定です。この先もおいしいアスパラ作りを極めたいですね」

苗を植えて
収穫できるのは3年後

露地での収穫は、7月上旬まで。「出来によってはたくさん収穫したくなりますが、とりすぎると翌年にいいものができなくなるんです」と意外な答えが返ってきました。さらに、「実は、収穫を終えてからも作業は続いています」と水上さんは付け加えます。
「アスパラガスは、苗を一度植えると10年以上も収穫できる作物なので、翌年に向けて根に養分を蓄積させるために、茎や葉を伸ばし、日光に当てます。さらに、倒伏防止の対策をしたり、病気にならないように防除したり、雪が降る11月頃まではメンテナンスの作業が続きます。収穫した後が、来年に向けた作業の始まりです」
ちなみに、今年植えた苗が商品として出荷できるまで、3年もかかるそうです。「堆肥を入れ、毎年手をかけて育てても2年間は我慢です」と水上さん。
1本のアスパラガスには、長い年月がかけられている。そのことに気付いただけでも、アスパラガスの味わい方が変わりそうです。