北海道とつくるおいしさ[10]
サッポロビール(株)

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道とつくるおいしさ10

「乾杯をもっとおいしく。」をスローガンに、新しい楽しさ・豊かさを発見できる酒類を提供しているサッポロビール(株)。主力であるビールテイスト商品の中に、「サッポロ クラシック」という北海道限定ビールがあることをご存じですか。地元での支持と人気はとても高く、「北海道で飲むならクラシック」と指名する道外ファンも少なくありません。今年、「サッポロ クラシック」は、道産素材に一層こだわったリニューアルを行いました。そのポイントとともに、「ビール造りは農業と共にある」と考える同社が北海道に寄せる想いを聞きました。

札幌の「開拓使麦酒醸造所」がルーツ

北海道開拓を担った開拓使は、30以上の事業を推進しました。そのひとつがビール醸造で、1876年、札幌に開業した「開拓使麦酒醸造所」が、サッポロビールのルーツです。醸造所では、本場ドイツでビール醸造技術を修得して帰国した中川清兵衛が指揮をとり、翌年には冷製「札幌ビール」と名づけたビールを東京で販売。これが、北海道で生まれた初のビールにして、日本人が造ったビール第一号となりました。このとき、大びんのラベルには開拓使のマーク「北極星」が描かれ、以来、この星が同社伝統のシンボルとなり、今もすべての商品に刻まれています。

農業振興策と、自生ホップの発見

当時のビール1本は、日本酒3.5升、かけそば20杯に相当する非常に高価なものでした。時の政府は、ビールを在留外国人に販売し、外貨獲得を図ろうと考えたようです。一方、開拓使は、食料確保のために北海道で農業を育て、さらには産業を生み出そうとしていました。同社の小野寺哲也前北海道本社代表は、「お雇い外国人のアンチセルが岩内で自生ホップを発見し、開拓使にホップ栽培を進言していました。農業振興という大きな流れと、ビール原料の調達の見通しが立ちそうだったことが、ビール醸造を後押ししたと考えられます」と語ります。

北海道への想いを詰めて、1985年誕生

創業90周年を前に、同社内では「北海道のみなさんに感謝を伝えるビールを造りたい」という声がわきおこり、全国から醸造担当者が札幌に集結。議論を重ねた結果、大麦麦芽100%でその旨みを感じられ、かつ何杯でも飲めるさわやかさを持ち、しかも、北海道の食や気候に合うビールを目指すことが決まりました。以後、人の手による小ロットの試作を繰り返し、完成したビールには「崇高な」「とても良い」という意味に自負もこめて「サッポロ クラシック」と命名。1985年、同社の北海道工場が全量を造り、届ける、地域限定ビールの先駆けとなって販売を開始しました。

道産大麦麦芽、道産ホップを使用

「サッポロ クラシック」は、2010年から12年連続で缶の売上がアップしています。好調が続く中、今年、同社は敢えて7年ぶりのフルリニューアルを行いました。そのポイントは、道産原料のさらなる使用です。「道産大麦麦芽『きたのほし』と道産ホップ『リトルスター』を一部使用しています。新しい『サッポロ クラシック』は、先人たちがこだわった大麦麦芽の旨みとさわやかさがより前に出ていて、飲み口が良く、新鮮な味わいです。そうした進化を伝えたく、缶やラベルに『道産素材』のアイコンを配置しています」。

2素材とも、サッポロビールの開発品種

2つの道産素材の詳細を、サッポロビールの野村真弘北海道工場長はこう解説します。「ビールの香味劣化は、LOX1という酵素が誘発します。『きたのほし』(写真/右下)は、世界で育種(※)を行っている数少ないビールメーカーの一つである当社が、約1万種を超えるコレクションの中からLOX1を持たない麦を発見し、北海道の優良大麦『りょうふう』と掛け合わせ、品種登録したものです。『リトルスター』(写真/右上)も当社が開発した品種で、華やかな香りが特徴です」。ホップはツルが天高く伸び、収穫は大変な作業になります。そのため、同社では夏の一時期、畑に応援を出すこともあるそうです。
※優れた品種同士を交配して、さらに良質の品種をつくる研究開発。

コクとさわやかさを両立させる製法を採用

大麦麦芽100%のビールは、味わいが深く、コクがある分、飲み口のさわやかさは実現しづらくなります。野村工場長に、「サッポロ クラシック」はその点をどのように両立させているのかを尋ねました。「北海道工場でも生産しているサッポロ生ビール黒ラベルやヱビスなどとは異なる、『ホッホクルツ製法』を採用しています。高温かつ短時間で仕込む、ドイツ古来の醸造法です。原料配合と製法を巧みに組合せることで、北海道の農産物から海産物まで、いろいろなおいしさに合うビールができあがるのです」。

四季と収穫に合わせた3種類

「サッポロ クラシック」には、期間限定のシリーズ商品もあります。よりさわやかな香りが特徴の「春の薫り」、爽快な香りと飲みごたえが特徴の「夏の爽快」、収穫したての生のホップを使って仕込む「富良野VINTAGE」です。「北海道では、季節ごとにさまざまな食を楽しめます。四季と収穫を味わってほしいという気持ちでお届けしています」と小野寺前代表。これらのシリーズ商品も、道産素材へのこだわりは変わりません。野村工場長は、「北海道の生産者さんには、いつも良質な原料を作っていただいています。ほんとうにありがたく、感謝しています」と言葉を寄せました。
※「富良野VINTAGE」のパッケージは、2021年のものです

ものづくりで、生産者さんへ恩返し

「大麦麦芽とホップで造るビールは農産物であり、ビールづくりは農業だと思っています」と野村工場長。「工場では一定のパラメーターに従うだけでなく、天候などの影響を受けても変わらぬ味を届けられるよう、知恵や経験を生かすことが必要です。農業も同じですよね」と生産者に語りかけるように言葉を続けました。これを受けるように小野寺前代表は、「おいしかった、飲んで良かったと喜んでいただけるものを作ることが、生産者さんへの恩返しになると考えています。生産者さんの期待に応えられるものづくりに、今後も一生懸命努めていきます」と締めくくりました。

「北海道は、サッポロビールのふるさと」という言葉を聞きました。「サッポロ クラシック」が道民に愛され、北海道の恵みと相性抜群なのは、道産子同士だからでしょう。
北海道で乾杯! 北海道に乾杯!
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