北海道の酒
アワード2021

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北海道の酒アワード2021

日本を代表する米どころ・北海道は、日本酒の原料となる酒造好適米(以下、酒米)の産地としても存在感を高め、道産酒米を使った「北海道の酒」も勢いと広がりを増しています。こうした中、道産酒米と道産日本酒のブランド力、認知度の向上、コロナ禍で落ち込んでいる需要喚起を図るために、2021年11月、札幌市内で「北海道の酒」の味を競う「北海道の酒アワード2021(以下、酒アワード)」が初開催されました。今回は、審査会と表彰式の様子をお届けします。

「北海道の酒」を地元でもっと愛して

2021年7月の北海道における清酒の出荷量は、コロナ以前の前々年同月比約68%(北海道酒造組合調べ)。コロナ禍による影響を大きく受けています。この理由について、「酒アワード」を主催する北海道農政部のこめ係長、加藤博さんはこう説明します。「観光客の減少が響いていますが、道民がふだん『北海道の酒』を飲んでいないことも関係しています。道内で消費される日本酒の約8割が道外の酒蔵のものというデータがあります。これは放っておけません。道内の酒蔵、道内で誇りを持って良質の酒米を作っている生産者を支えるために、『北海道の酒』を地元でもっと愛されるものにしたい。そのための『酒アワード』だという意気込みを表すために、テーマは『最初の一歩』としました」。

消費者600名が審査員に応募

「酒アワード」の最大の特徴は、プロが選ぶ品評会ではなく、一般消費者が選ぶコンテスト形式にしたところ。「消費者の皆様に、審査を通じて『北海道の酒』を知っていただこうと考えました。審査はご自身の好みで採点する方式で、専門的な知識は一切不要。特設サイトで審査員を募集したところ、定員600名は早々に満員になりました」と加藤さん。一方、酒蔵が出品する酒は「北海道米を使用して造った市販酒」で、「最初の一歩」にかなう1銘柄と指定。道内14・道外4の酒蔵が、自信作と共に参加しました。

生産者のやりがいにもつながる

11月4日、バイヤーらによる専門家部門の審査が行われ、道内で酒米を生産しているJAも参加しました。JAあさひかわの代表理事組合長の島山守穂さん(右)は、「18銘柄それぞれに特徴があり、お酒は楽しいものだと思いながら味わいました。生産者も苦労が報われ、喜ぶでしょう」と地元に思いをはせていました。JAピンネ農産部部長の奥塚茂樹さん(左)は、「北海道にはいい酒蔵がいっぱいあることを改めて確認できました。今後もみんなでいい酒米を作っていこうと、元気をもらいました」とほおをゆるめます。お二人の言葉から、「酒アワード」は生産者のやりがいにもつながることを確信しました。

料理とのペアリングを
試すには格好の土地

「酒アワード」の審査員長は、日本酒ソムリエ、第14代酒サムライの千葉麻里絵さん(東京都)が務めました。「道産酒米の3品種はいずれも品質に対する評価が高く、それぞれに個性があります。『吟風(ぎんぷう)』は味わいがある酒、『彗星(すいせい)』はシャープな酒、『きたしずく』は両者の中間くらいに仕上がる傾向を感じます」とコメント。さらに、「北海道にはたくさんのおいしい食べ物や郷土料理があります。日本酒と料理のペアリング(組み合わせ)を試すには、北海道は格好の土地だと思います」と、日本酒体験の広がりを感じさせる提案も寄せられました。

北海道知事も審査会で飲み比べ

審査会の初日には、北海道知事の鈴木直道さんも会場に駆けつけました。「コロナ禍の影響を受けている北海道を元気にしていくためには、地域のものを地域で消費し応援することが重要。このアワードをきっかけに、お気に入りの1本が見つかり、道産酒米、道産日本酒がもっと身近なものになることを期待しています」と、力強く挨拶。出品された全18銘柄を丁寧に飲み比べした後、「このイベントを契機に反転攻勢に出たい」と語る北海道酒造組合会長の田中一良さんと熱いエールを交わしていました。

18銘柄、みんな違ってみんないい

消費者の審査は、呑兵衛部門と初心者部門に分かれ、11月5日から7日まで行われました。ここで、審査体験をお伝えします。テーブルには、10mlの酒が入ったキャップが①から⑱までの番号を割り振られて並んでいます。酒蔵名も銘柄もわかりません。審査は、番号ごとに「香り」、「味」、「バランス(調和)」に対して「すごく好き」、「好き」、「ふつう」、「あまり好きではない」、「好きではない」のいずれかに〇を付けます。審査時間は30分。銘柄を変えるたびに水で口をゆすぎ、香りを確かめ、味わうと、違いが鮮やかに立ち上がります。一口に日本酒といっても、みんな違ってみんないい。そう感じる審査でした。

グランプリは、
「結ゆい 特別純米酒 きたしずく」

11月17日、「酒アワード」の受賞酒の発表・表彰式が開催されました。初代グランプリに選ばれたのは、新十津川町産「きたしずく」を使用した結城酒造(茨城県結城市)の「結ゆい 特別純米酒 きたしずく」。同酒蔵の杜氏・浦里美智子さんは、「道産酒米と出会って7年。この間、酒米も私も一緒に成長してきたように思います。受賞した酒は、豊潤でやわらか。それでいて、後味はすっきりしています。これからも、日本全国に道産酒米のアピールができるよう、酒造りに精進していきます」と、受賞の喜びと抱負を語りました。

審査委員長賞は、「上川大雪 特別純米」

審査委員長賞は、道産酒米で醸した上川大雪酒造 緑丘蔵(上川町)の「上川大雪 特別純米」。千葉さんは「この酒は香りに頼らず、米を大事にして、米の特徴を引き出している」と講評。同蔵の杜氏・小岩隆一さんが、「うちの蔵の最初の一歩は、2017年。酒蔵は無理と言われた土地で生まれました。酒米は全量が道産、すべて純米というスタンスは今後も変えずに、うちらしい酒を造っていきます」と語ると、千葉さんが「上川大雪酒造 碧雲蔵(帯広市)の本醸造もとにかくおいしい。おすすめです」と言葉を添え、会場にはあたたかな笑いが広がりました。

「北海道の酒」に強く感じた可能性

専門家部門賞は東川町産「彗星」使用の「三千櫻 彗星45 東川ノ雪」で、「今年は酒米の作況がとても良く、酒も去年より良い造りになっています」(三千櫻酒造/東川町)。一般呑兵衛部門金賞は道産「彗星」使用の「二世古 純米吟醸酒」で、「うちでは地元の酒米を使っています。早く帰って、受賞を生産者に直接報告したいです」(二世古酒造/倶知安町)。一般初心者部門金賞は道産酒米使用の「千駒 大吟醸」で、「震災時に道産酒米に助けてもらい、今では道産酒米を9割がた使っています。今後も恩返しをしていきたいです」(千駒酒造/福島県白河市)。千葉さんは「受賞していない酒蔵の酒もおいしかったです。『北海道の酒』に可能性を強く感じました」と笑顔で言葉を結びました。

「北海道の酒」への関心の高まりに期待

4日間にわたり、600名が審査するという新しいスタイルのアワード。北海道農政部長の宮田大さんは、「私自身、18銘柄を飲み、非常に感動しました。日本酒は地域の味を一層引き立てます。このアワードが、特に道民の『北海道の酒』への関心を高める契機になってほしいです」と期待を語っていました。米どころは、酒どころと言われます。北海道には、うまい酒米があり、清らかな水があり、熱い志を持った造り手がいます。寒くなるこれからの季節、あたたかい食事を「北海道の酒」と一緒に楽しんで、北海道の新たなおいしさとめぐりあってください。

酒米が違えば、味が違う。同じ酒米でも、酒蔵が違えば、味が違う。予想以上の発見でした。
ブラインド審査だからこそ、これまで気づけなかった酒蔵や味わいを知ることもできました。
みなさんも、「北海道の酒」の世界に酔いしれてみませんか。

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