北海道発、
JR貨物で
全国へ
Vol.2

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道発、JR貨物で全国へ Vol.2

北海道から全国へ移出されている農畜産物は、年間約350万t。馬鈴しょの一大産地・十勝にある近隣4町5JA(※)からなる士幌馬鈴薯施設運営協議会では、生食用、加工用、でん粉用馬鈴しょを合わせて年間約25万tを出荷しています。今回は、馬鈴しょの安定供給を使命とする同協議会のさまざまなアングルからの取り組みを紹介します。
※JA士幌町、JA上士幌町、JAおとふけ、JA木野、JA鹿追町

九州まで計100の市場に約17万t

同協議会は、1960年に発足して以来、生食用、加工用、でん粉用馬鈴しょの集荷・販売を目的に、常に次代を先取りする取り組みを行ってきました。今回焦点を当てる生食・加工用馬鈴しょ(以下、馬鈴しょ)の取扱数量は、令和元年実績で約17万t。主要品種は、男爵を中心に、とうや、メークイン、キタアカリ、ひかる、ホッカイコガネと多彩です。出荷先のほとんどは本州で、遠くは九州まで計100の市場に定期的に安定出荷しています。

約200の情報が紐づく専用荷札

馬鈴しょの受入は8月下旬から10月上旬、その量は一日5,500tから6,000tにおよびます。同時に大量に受け入れる馬鈴しょに関する情報は、集荷時にコンテナごとに貼られるバーコード付き専用荷札で管理します。この一枚に、圃場情報から肥料農薬や管理作業、収穫作業、集荷、品質検査、貯蔵管理、出荷情報まで約200の情報が紐づくため、トレーサビリティの詳細までを容易に追跡できます。

蓄積されたデータの活用でリスク管理

「出荷先からのフィードバック情報もこの番号を通して得られるようになっています」と語るのは、同協議会の経営主体および管理JAであるJA士幌町の久保武美農工部長。専用荷札の活用は他にもあるとして、こう補足します。「この仕組みを導入した2003年から現在までに蓄積されたデータは膨大で、そこから抽出した有益な情報は生産者に随時伝えています。生産者にとって勝負は一年に一回、そこで失敗がないようリスクを管理することは、産地を守り、安定出荷をかなえることにもつながります」。

トレーラー輸送と鉄道輸送の活用

馬鈴しょの出荷は8月下旬から翌年5月上中旬の日曜を除く毎日、10kg詰めで2万3,000~2万5,000箱が運ばれていきます。「輸送面では、かつてはトレーラー輸送が8割、JR貨物による鉄道輸送が2割でした。世界的な環境問題の機運の高まりを受けて、2006年、二酸化炭素排出削減に貢献できるJR貨物による鉄道輸送にシフトしました。年間2万tのシフトが目標でしたが、実際は倍近い3万5,000tを達成し、現在のトレーラー輸送と鉄道輸送の比率は50対50です」と久保部長。先進的なこの取り組みは、2006年度国土交通省政策統括官表彰を受けています。「求める方に、安定的に間違いなく届けるために、二つの輸送手段の長所をしっかり活用していこうという考えです」。

「+50%の輸送改革」を断行

社会問題化している物流や労働力不足にも、永続的に対応できる改革を進めています。久保部長は、「+50%の輸送改革」と名付けた施策を次のように解説します。「馬鈴しょは土付きで集まります。それを洗うと約3.5%を減量できます。裸になれば色がわかりますから、規格外品は機械で自動的に排除できるようになります。この分が6.5%相当あり、計10%の貨物の減量化になります。並行して、我々はコンテナを独自で開発しました。外寸を変えず、薄い素材のメッシュにしたことで内容量を最大15%増やすことができました。次にトラックを一台20t積載の車両から25t積める規制緩和車両に切り替え、これで輸送量を+25%増やしました。10%のムダを省き、+15%と+25%で50%の輸送改革を断行している状況です」。なお、同協議会では、vol.1で紹介した「一貫パレチゼーション輸送」を2003年に構築。物流系シンクタンクが優良事例として紹介しています。

人間と機械が得意分野で分業

馬鈴しょを安定的に届けるための物流改革。その考え方は、選果場にも反映されています。発想のベースは、人間と機械の分業化です。「腐敗や奇形、緑化や傷などをチェックする受入検査は、人間が行います。担当スタッフは平均年齢65歳以上のベテラン揃いで、見る目は確かで判断も早いです。その後の塊茎重計量や比重検査、2方向カメラ、近赤外線とX線を用いた空洞検査などは機械が全自動で行います」と久保部長。得意分野で分業する仕組みともいえます。選果場は慢性的に人手不足といわれますが、同協議会では70歳定年制度を取り入れるなど、長く働ける環境づくりを進め、人材確保はもちろん、馬鈴しょの安定供給の足元も固めているといえます。

3カ所の貯蔵庫を遠隔監視

同協議会は、士幌町、鹿追町、埼玉県熊谷市に馬鈴しょの貯蔵庫を持ち、その部屋数は80以上にのぼります。そして全室にカメラを設置し、遠隔監視を行っています。温度、湿度をはじめ、空気組成、機械の運転状況もすべて「見える化」し、正常値を逸脱した場合は携帯電話に異常発生を知らせるメールが届く仕組みになっています。久保部長は、真剣なまなざしで次々と移り変わるモニターをみつめながら、「生鮮品を扱っているわけですから、鮮度を保つのが第一。マンパワーの限界をシステムで補っています。今後はAIの研究も進めていかないといけないでしょうね」と話します。

改善を止めず、最初にやる

「これだけの量の馬鈴しょを預かり、全国へ届けている我々としては、“安定的”に“間違いなく”を徹底しなければ」と、表情を引き締める久保部長。「いまは100点でも、1年2年後には技術革新が起きる時代です。常に遅れをとらない努力、行動をして、改善を止めないこと。二番煎じ、三番煎じではなく、最初にやることが重要なんです」と続けます。1955年、JA士幌町がでん粉工場を設立し、農村工業、農民工業の成功を旗印に改革を行ったことをルーツにもつ同協議会。その開拓者精神が、脈々と受け継がれ、いまも息づいているようです。