あなたに届け!北海道育ちの花 札幌花き園芸(株)

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

あなたに届け! 北海道育ちの花

花物、葉物、実物など、花き(以下、花)の産地としても知られる、北海道。夏から秋にかけて、出荷が本格化する中、1965年から切り花の卸売を行っている札幌花き園芸(株)を訪ね、道内各地で生産された花が生花店に届くまでの道のりを聞きました。また、フラワースクールも運営する(株)花奈フラワーで教わった、「おうち時間」に潤いを与える花を長持ちさせるコツもご紹介します。

札幌市近郊での花生産は戦前から

札幌市近郊では、戦前から花の生産が行われ、市内には多くの花の卸売業者が集まっていました。札幌花き園芸(株)の前身はその時代から卸売に携わり、現在は道内で市場流通する6割以上を扱う札幌花き地方卸売市場(以下、市場)の中核的役割を担っています。道内30以上のJAを中心とする1,850の出荷者と約300人の買受人の間で、年間8万7千アイテム以上の花を取り扱っています。

道産の花は、色が鮮やかで長持ち

菊・小菊、カーネーション、バラ、ユリ類、トルコキキョウ、洋ラン、アルストロメリアなど、北海道では多種類の花が生産されています。「本州では以前から、北海道の花は色が鮮やかで長持ちすると高く評価されていて、道内の産地に関心を寄せるプロもいらっしゃいます。今後、低温栽培の技術が確立されれば、北海道の花生産はもっと伸び、需要も高まるのでは」と、田嶋久嗣代表取締役社長は期待を込めます。

週3回あるセリ日にあわせて出荷

北海道の花は主にハウスで生産されます。生産者は大事に育てた花を選別し、水あげした状態で市場に出荷。市場には、週3日行われるセリの前日深夜から花が続々と到着します。札幌花き園芸(株)では生産者から届く出荷情報をデータ入力し、市場に届いた花を仕分け・検品して準備を整えます。セリ当日、買受人は午前8時の開始を前に花を下見し、セリ場へ。活気あふれるセリが終わると、買受人は最終検品を経た花を受け取り、市場を後にします。

セリからインターネット販売へ

市場では、最大7名のセリ人がセリ台に同時に立ち、数字を指のサインで表す伝統的なやりとりで取引を行います。セリ人はベルトコンベアで運ばれた花を買受人に見えるように高く持ち上げ、生産地や生産者、価格などはディスプレイに表示。花の売買が決まるまで10秒足らず。1時間で約2千ケースをさばきます。こうしたセリを行う卸売市場は全国的に減少傾向だそうで、田嶋社長は「当社でも、インターネットでの事前販売が主流です」とした上で、説明を続けます。

価格の安定化を図るためにも

「花きは鮮度が命、全量を即日完売します。セリが過多になると価格が暴落し、少な過ぎると高騰するため、価格が不安定になりやすいんです。事前販売を併用すると、その点をカバーできます」。買受人にとっても、前日にネットで注文すれば、翌朝には花が届き、そこから下処理をしても開店時間に間に合います。「かつて視察した花流通の先進国・オランダの卸売市場には花は一輪もなく、すべてモニター越しに見て取引をしていました。日本もそうなるのでは」と、田嶋社長は見通します。

道外輸送で培った工夫、技術

北海道の花を道外へ輸送する手段は、トラックがメインです。花の輸送では、目的地に着くまでの間に、荷台の温度をゆっくり変化させます。出発地の温度のまま到着すると、花が温度差に驚いてしおれるなど、コンディションが悪くなることを防ぐためです。「北海道の花生産者は、航空便も使いますから、梱包技術の蓄積があります。巨大な消費地が遠隔にあるデメリットを克服してきた経験は、輸出に挑戦しようとする際にも生かせると思います」。田嶋社長はそう語り、自信をのぞかせました。

「花のある豊かな暮らし」を

札幌花き園芸(株)では、生産者の思いを伝えようと、市場内に展示台を設置。出展者が新品種や産地自慢の花を自由に飾り、プレゼンテーションを行います。また、「花のある豊かな暮らし」をお手伝いしようと、産地と組んで小学校で「花育」の特別授業を行うほか、男性向けに花の買い方やブーケの作り方をレクチャーするセミナーも開催。さまざまな機会を通して、花の魅力を伝えています。

冷たい水が、長持ちさせるコツ

きれいに咲いた花を少しでも長く楽しむには、どうしたらいいのか。(株)花奈フラワーの横山好子代表取締役にお聞きしました。「水温が一番のポイントです。水は冷たいほうが良く、ぬるいと感じたら、一日1回と言わず、2回、3回と水を替えてください。水温が高くなると、水を吸い上げにくくなり、花がうつむくことがあります。そうなったら、茎を少し切り、新しい水に挿してやれば、元気になります」。青色やダークカラーの花、葉物や枝物を複数使うアレンジが最近は人気とも教えてくれました。

花は、生活の潤いを保つアイテム

花の好みにも土地柄があらわれるようで、札幌では2、3月はビビッドな色、春はパステルカラーが好まれるそうです。「そうした花を通した色の文化を啓蒙し、北海道発の花の使い方を発信していくお手伝いをしたい」と、抱負を語る田嶋社長。花は社長にとってどのような存在ですか?と尋ねると、「生活の潤いを保つアイテムの一つ。そして食べ物の次に大切なもの」という答えが、優しい笑顔とともに返ってきました。
 
生産者から生花店まで、何人もの人に大切に扱われながら、手元に届く一輪の花。特別な日だけではなく、ふだんからもっと親しみたいですね。