北海道とつくるおいしさ[07]
(株)北菓楼
北海道砂川市

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道とつくるおいしさ07

札幌市内から北へ約80km、空知(そらち)地方に位置する砂川市で、北海道の食材に強いこだわりを持って銘菓を作り続けている(株)北菓楼。同社が1994年に発売を開始し、現在、期間限定商品を含め10種類を数える「北海道開拓おかき」は、一貫して道産もち米を100%使用し、餅に練り込む海の幸も塩も道産という“オール北海道の米菓“です。「この地で百年、五百年、千年と愛され続けるお菓子屋を目指す」同社の姿勢を託された、サクッとした一粒一粒が誕生するまでを聞きました。

自然豊かな田園都市でのお菓子作り

父なる山「ピンネシリ」と母なる川「石狩川」に抱かれた砂川市は、春にはハクチョウが飛来し、秋にはサケが遡上する自然豊かなまちです。(株)北菓楼は、国道12号線を中心に菓子屋が広がり、「すながわスイートロード」とも呼ばれるこのまちに1991年に誕生。来年、30周年を迎えます。

「北海道開拓おかき」、その原点

「当社では、素材と製法にこだわり、手間を惜しまず、感動を与えられる本物のお菓子作りに取り組んでいます」と語るのは、大野重定企画部次長(写真左)。それを受けて、武川真也製造部課長(写真右)は、「北海道開拓おかき」の原点をこうひもときます。「開拓時代、北海道では小正月の頃、固くひび割れたお供え餅を金槌で砕き、揚げて食べていました。その味を復活させたいという熱意が生み出したこの商品は、私たちが目指す“本物のお菓子作り”を端的に表しています」。

道産もち米100%で作るからこそ

「北海道開拓おかき」は、一貫して道産もち米を100%使用しています。道産もち米は、粘りとコシがあり、きめが細いため、おかき作りに適していると前置きした上で、武川課長はこう語ります。「北海道という土地の物語を受け継ぐこの商品は、道産もち米で作るからこそ意味がある。他府県産もち米を使うことは、私に限らず、当社の誰もが考えたことはないでしょう」。信念にも似た強いこだわりが感じられる言葉です。

洗米し、蒸し、つきあげる

精米した道産もち米を主原料に、7日間の時を費やして作られる「北海道開拓おかき」。大野次長が「年々、品質が上がっている」と太鼓判を押す道産もち米を洗い、水に一晩つけてから蒸し上げます。「蒸したもち米をつきあげる途中、昆布などの海の幸を練り込み、一緒につきあげます。だからおかきの中から味が出てくる。揚げた餅に味をまぶすだけの方法ではこうはなりません」と、武川課長は独自の製法に自信をのぞかせます。

餅の乾燥は3工程・約5日間

餅ができたら、自然にひび割れをさせるために約5日間の乾燥工程に入ります。まず、冷蔵庫で3日間じっくり乾燥させ、固まった餅をサイコロ状にカット。さらに水分を抜く一次、二次乾燥を経て冷暗所で寝かせます。「二度乾燥させるのは、芯まで均一に乾燥させるため」と武川課長。乾燥のさじ加減は、気温や湿度、味を決める海の幸によって異なるため、乾燥室では専門スタッフが絶好のタイミングを見計らっているそうです。

頃合い良く、おかきの「花を開かせる」

油で揚げた際、ひびが入ったところから餅が広がることを「花が開く」と言い、餅の乾燥具合によって開きと食感が微妙に変わるそうです。同社スタッフの熟練の技と経験によって頃合い良く花が開いたおかきは、天然ミネラル成分を含む道産の塩や各種海の幸のパウダーなどで味付け。冷ましてから、各種海の幸の風味を楽しめるおつまみと共に袋詰めします。「おつまみは、おかきの箸休めのように召し上がっていただければ」と、大野次長はアドバイスをくれました。

最新作「えりもうに」は商品化に10年

現在、期間限定商品を含め10種類ある「北海道開拓おかき」は、いずれも数えきれないほどの試作を重ねて誕生しています。「おかきにすると食感を再現できない素材は、例えば燻製にしてから使ってみるなど、いろいろな方向から挑戦しています」と大野次長。2020年4月に発売を開始した10種類目の「えりもうに(季節限定)」は商品化まで10年かかったといい、同社渾身の一品です。また、既存商品も、味に磨きをかけるために、工場のスタッフはもちろん、各部署長が参加している毎朝の試食会でも試食を行っているそうです。

“オール北海道の米菓”という自負

「『北海道開拓おかき』は、あらゆる原材料が道産。“オール北海道の米菓”です」との大野次長の言葉に、道内のもち米生産者や漁師と接することもある武川課長は「皆さんの顔が浮かぶたび、喜んでもらえる商品を作らなければと気が引き締まります」と続けます。いつ食べても気持ちがやすらぐ「北海道開拓おかき」は、北海道の歴史と風土の豊かさ、同社の真摯なものづくりが溶け合って生まれていることを改めて実感しました。
 
同社には開発専門部署はなく、工場で作る人が商品開発を担っているそうです。お菓子作りの本来のあり方を尊重するそうした姿勢が、どこか懐かしく、ホッとするおいしさを生み出しているのでしょう。