宮本 勝彦さん
(JA上川中央)
農家の時計

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今回の農家さん

宮本 勝彦さん(JA上川中央)
愛別(あいべつ)町出身。旭川市にある卸売市場に勤務した後、1979年にまいたけ農家として新規就農。2007年、町内のまいたけ農家4軒とともに「農事組合法人タッグ」を設立。

JA上川中央の特産物
『愛別まいたけ』とは?

JA上川中央のある愛別町は、旭川市から北東へ車で約40分。大雪山系の麓に広がる、農畜産業と林業が盛んな町です。JA上川中央では約50年前から、きのこ類の栽培に力を入れており、えのき茸、なめこ、まいたけ、しいたけ、えぞゆきのした、きくらげなどのきのこ類を一年を通して生産し、北海道を中心に一部道外にも出荷しています。その量は年間約5,000t。愛別町産だけで、北海道産きのこ全体の約3分の1を占める、まさに「きのこの里」です。なかでも、まいたけは、より天然に近いとされる菌から栽培し、大ぶりでしっかりした歯ごたえがあり、強い香りと濃厚な味わいが特徴的で、贈答品としても利用されています。
 

■宮本さんの1日(12月下旬の一例です)

午前中に収穫し、
その日のうちにパック詰め

宮本さんの栽培施設では、季節に関係なく一年を通してまいたけを栽培しています。毎日、午前中に収穫作業を行い、収穫したまいたけはすぐに包装センターに運びます。順次規格の重量ごとに分けてパックに詰め、夕方までにすべてJAの集荷施設に納品。現在、40人~50人ほどのスタッフで、1日2t~3tを出荷しています。
まいたけの栽培施設は、1年中室温20℃以上に保つよう24時間自動制御されていますが、冬の愛別町は最低気温がマイナス20℃近くになることも珍しくありません。まいたけの需要は夏よりも冬のほうが高く、12月から3月にかけて出荷の最盛期を迎えます。「まいたけは、寒さに弱い作物ですから、特に凍れる(寒い)日は、心配で心配で。夜中に何度も様子を見に行くことがあります。冬はまいたけ栽培に厳しい季節ですが、鍋料理には欠かせません。みなさんに、おいしいまいたけをお届けしないと」と宮本さんは微笑みます。

菌の植え付けから収穫まで、
約75日間

宮本さんが栽培するのは、まいたけ一種類のみ。その理由を尋ねると、「ほかのきのこの菌が混ざると、生育が阻害されてしまうんです。特に、まいたけはデリケートなので、雑菌にも気を使います」と教えてくれました。
まいたけの栽培日数は約75日間。宮本さんは、白樺のおがくずにおからや水を混ぜて菌床を作り、120℃の高熱で滅菌した後、菌床を無菌室に移し、まいたけの菌を植え付け、培養専用の施設で60日間熟成。その後、発生棟と呼ばれる施設で12~13日間、1株が500~600gになるまで成長させます。「発生棟は、まいたけが自生する秋の森に近い環境を再現しています」と宮本さん。一年を通して室温は20℃、湿度は95%の状態に管理されています。
 
宮本さんが就農した当時、町内ではすでにきのこ類の栽培が盛んでしたが、まいたけ栽培は成功例がなかったそうです。「まいたけができたら、地元の特産品に一品加えられる」と、宮本さんは本州の種菌メーカーに何度も足を運び、栽培方法を学んだといいます。「最初は本当に苦労しました。納得のいくまいたけができるまで、6年はかかったかな。愛別町は冬の寒さが厳しくて、雪も多い土地。それでも、施設の温度管理さえしっかりやれば、一年中まいたけが育てられます。北国にとって、きのこはありがたい作物です」と宮本さんは語ります。

炊き込みご飯に天ぷら、
みそ汁、食べ方いろいろ

宮本さんに、まいたけ栽培の魅力を訪ねると「まいたけの成長は、意外と早いんです。1日、1日、力強く真っ直ぐに伸びるまいたけを見るとうれしくなります。楽しみみたいなものですね」と笑います。「それに、愛別のまいたけは、本当においしいんですよ」と胸を張る宮本さん。愛別のまいたけは香りが良く、茎が肉厚で、加熱してもシャキッとした歯ごたえが楽しめるのが特徴なんだそう。好きな食べ方について聞くと、「まいたけご飯は、毎日食べても飽きないくらい好きです。歯ごたえがいいから、天ぷらもおいしい。細かく刻んでみそ汁の具にすると、すごくだしが出ます。バーベキューや焼肉にも欠かせません」と、次々に飛び出しました。
そんな宮本さんの今後の目標は、「生産量を増やすこと」と言葉に力を込めます。「ありがたいことに、もっと仕入れ量を増やしたいというご要望をいただくことがあります。しかし、現状ではそれに応えることができません。もっと規模を拡大して、道内だけでなく日本全国のみなさんに、愛別のまいたけをお届けするのが目標です」。
そして最後に、「ぜひ愛別のまいたけを食べてみてください。ほかの産地との違いに、きっと気がついていただけると思います」と力強いメッセージをくれました。