鳥羽 光生さん
(JAふらの)
農家の時計

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今回の農家さん

鳥羽 光生さん(JAふらの)
静岡県出身。北海道内でアクティビティガイドを経験後、2006年に南富良野町で就農。2018年より「ふらのミニトマト部会」の会長を務めています。

JAふらのの特産物『ミニトマト』とは?

北海道の中央部に位置する上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町、占冠村の1市3町1村に広がるJAふらの。ミニトマトの栽培は1975年頃から行われ、現在では年間1,500トンもの出荷量を誇る道内屈指の産地です。同JAのミニトマト生産者で組織される「ふらのミニトマト部会」では、全量を減農薬、減化学肥料の特別栽培で生産する条件を設け、水分を調整できるハウスで栽培しています。そのトマトは、皮が薄く、酸味と甘みのバランスが取れたみずみずしい味わいが特徴です。
出荷期間は、6月上旬から10月下旬まで。主に札幌や旭川のほか、関東、関西、中京方面へも出荷しています。
 

■鳥羽さんの1日(8月上旬の一例です)

最盛期は7時半から夕方まで収穫作業。
日曜は趣味を楽しむ時間に

鳥羽さんのハウスでのミニトマトの収穫は、例年6月中旬頃から始まり、10月下旬まで続きます。最盛期は7月中旬から9月下旬。多い時にはパートさんなど総勢7人で、一粒一粒を手作業で収穫します。
ミニトマトの収穫の目安について鳥羽さんは、「トマトの色づきですね。選果場の職員が、毎朝の出荷時に適切かどうかをチェックするんです。合格した色を確認して、収穫時に調整します」と説明します。道外へも出荷されるため、完熟の状態で収穫してしまうと品質が低下するリスクが高まるそう。「すごく暑い日は一晩で真っ赤になってしまうので、色が薄い状態のものを収穫するようにしています。各生産者は気温に合わせて取るべき色を見極めなければならず、収穫のタイミングが早過ぎても、取り遅れてもダメなんです」。
そのため収穫作業では、手際の良さだけでなく、適切な色のトマトだけを摘み取る目も必須だと鳥羽さん。「四六時中トマトばかり見ていると、適切な色が分からなくなってくるので、合間に休憩を取りながら収穫するようにしています」。
鳥羽さんは、平日はできる限り18時には作業を終わらせ、日曜は休みにしているそう。「水やり作業などもあるので丸一日は休めませんが、なるべく遊びに出かけます。最近始めたのが、海釣りです。去年は車で2時間かけて、苫小牧あたりまで釣りに出かけていましたが、今年は忙しくてまだ行けていないんです(笑)」

憧れの北海道に移住後、
南富良野町で農家へ転身

私たちが向かったのは、鳥羽さんのハウスではなく、JAふらのの選果場。場内には、カゴいっぱいのミニトマトが所狭しと並んでいます。
ミニトマト農家として16年のキャリアを持つ鳥羽さんは、20代の時に静岡県から北海道に移住し、前職はニセコや富良野でアクティビティガイドとして活躍していたという異色の経歴の持ち主でもあります。
「北海道に住んでみたいという気持ち一つで故郷を飛び出し、仕事も住む場所も北海道に来てから決めました。30歳の時に生き方を考えて、歳をとってもこの地で暮らしていくなら農業しかないと腹を決めたんです」
農業を志した鳥羽さんは、研修生として地元の生産者のもとでミニトマト作りを約4年間学び、35歳で満を持して独立しました。
 
「ミニトマトを選んだのは、あまりかっこいい理由ではないんです。最初は、やはり北海道で農業をやるなら広い畑に大きなトラクターで……と意気込んでいましたが、新規でしかも大規模で農業を始めるとなると、資金もそれなりに必要です。その点ミニトマトは、広い農地も、大型の農業機械も不要で、初期投資が比較的少なく済みます。さらにミニトマトは1本の苗に数多くの実をつけるので、長期的に収穫が見込めるのも魅力に感じました」
鳥羽さんによると新たにミニトマト栽培を始める生産者や新規就農者も徐々に増えてきているそうです。「部会では、勉強会を毎年行ってきました。これまでは、ベテランも初心者も学ぶ内容は同じでしたが、今後は部会員の意見を聞きながら、新規就農者向けなど、技術の差を埋められるような企画も考えていきたいです」

量と質を高めるために、
土づくりから手間を惜しまず取り組む

現在9棟のハウスでミニトマトを栽培しているという鳥羽さん。1棟あたりに植えられている苗は、約1,050本にもなるそうです。出荷までの間、最も神経を使うのが春先だと鳥羽さんは話します。
「生育初期の4月頃はまだまだ肌寒く、ハウスの中でも霜にやられてしまうこともあります。寒さに当たると苗に障害が出てしまうので、気温が上がり、しっかりとした苗に育つまでがすごく気を使います」
ミニトマト1本の苗から収穫できる量は、部会の平均で約3キロ。さまざまな要因があるため、これをやれば必ず収量が取れるとは言い切れないと前置きした上で、鳥羽さんはミニトマト作りのポイントについて次のように話します。
「土づくりや肥培管理が大切なのは、いうまでもありません。うちのハウスでは毎年収穫後に土中の成分を分析して、その結果に基づいて肥料を調整しています。ここ数年は猛暑の日も増えているので、ネットを張り、遮光ビニールをかけて日差しや暑さからミニトマトを守るような対策もとっています。どの作物も同じだと思いますが、 一つ一つ丁寧に手間を惜しまずに育てている人は、収穫量も多いと感じます」
 

特別栽培で、
安全安心の品質を全国に

「魅力的な作物はたくさんありますが、ミニトマトは生でそのまま食べられるので、調理や加工でごまかせないぶん、きちんと作ればおいしさがダイレクトに伝わり、喜ばれます。そこが魅力です」と鳥羽さん。「子どもが喜んで食べていると聞くと、生産者としても親としても嬉しいです。やっぱりおいしいと言ってもらえるのが一番ですね」と笑顔を見せます。
「ふらのミニトマト部会」では、富良野管内82戸の全生産者が特別栽培でミニトマトを生産しています。特別栽培とは、農林水産省が定める各都道府県の慣行基準に対し、化学肥料・農薬の使用を50%以上削減する栽培方法です。部会では毎年、特別栽培農産物の説明会や講習会などを行い、特別栽培のルール遵守を徹底しています。
「JAふらのでのミニトマトの特別栽培は、僕の二代前の部会長が始めました。病気や害虫へのリスクが少なくないので、各生産者は苦労していると思いますが、それぞれで工夫しながらいいトマトを作ってもらっています。ですから、JAふらののミニトマトは安心ですと自信を持ってお伝えしたいです。さらにシーズンを通して、一定の品質のものを皆さまにお届けするように全生産者が努力をしています。ぜひ手に取っていただきたいです」