福井 和範さん
(JAきたみらい)
農家の時計

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今回の農家さん

福井 和範さん (JAきたみらい)
北見市出身。高校卒業後、一般企業に就職。会社員を経験した後、23歳で農家の三代目として就農。現在は玉ねぎのほか、小麦、てん菜を栽培。2022年より「北見市玉葱振興会 特別栽培部会」の部会長を務めています。

JAきたみらいの特産物
『環(めぐる) 玉ねぎ』とは?

『環(めぐる)』は、減農薬・減化学肥料の特別栽培(※)で作られ、さらに農作業での二酸化炭素の排出削減にも取り組む、カーボン・オフセットの玉ねぎです。カーボン・オフセットとは、企業や団体が地球温暖化対策として二酸化炭素排出量を減らす努力をした上で、どうしても削減できない量を、ほかの場所で削減・吸収した分から買い取ることで埋め合わせることをいいます。
「北見市玉葱振興会 特別栽培部会」では、豚のふんを原料とした有機肥料や、防虫効果のある木酢液など天然由来の資材を活用し、北海道の基準に対して化学肥料・農薬の使用量を半減させています。また、二酸化炭素を吸収した間伐材の木炭を畑に入れることで、二酸化炭素を土中に閉じ込めています。そうした努力をしたうえで、道有林の整備によって生まれた二酸化炭素の吸収量を売り上げの一部で買い取っています。
さらに、社会的な環境意識の高まりにも応えたいとの思いから、販売先の一つであるコープさっぽろと、森林保全に取り組んでいます。『環』玉ねぎ1パックを購入いただく都度、1円を「コープ未来(あした)の森づくり基金」に積み立て、北海道内で木を植える活動を行っています。

『環』の産地での出荷時期は、例年9月〜3月まで。主にコープさっぽろ、東海コープなどで取り扱っています(道内の一部店舗では、6月ごろまで販売しています)。
 
※農林水産省が定める各都道府県の基準に対し、化学肥料・農薬の使用を50%以上削減する栽培方法
 

■福井さんの1日(8月下旬の一例です)

晴れの日を狙い、
8時半から夕方まで機械で収穫

玉ねぎは生長のピークを過ぎると、真っ直ぐに伸びていた葉が次々と倒れていきます。これを倒伏(とうふく)といいますが、この倒伏が始まると、機械で玉ねぎの根を切っていきます。根切りをした玉ねぎは葉が徐々に枯れていき、外皮が濃く色づきます。店頭に並ぶ玉ねぎに色味が近づくと、収穫のサインです。
「最盛期は8月のお盆明けから2、3週間ほど。天候にもよりますが、根切りから2週間程度で収穫ができます。玉ねぎは収穫後に雨に濡れるとシミができてしまい、傷みやすくなります。そのため、よく晴れた日に作業を行うのがベストなんです」と福井さん。「玉ねぎの状態が一番いい時に、一気に収穫できるのが理想なのですが、何しろ天気が相手なので、現実はなかなか思うようにうまくはいかないですね」と付け加えます。収穫時期は特に注意深く天気を読み、総勢4、5人で畑の玉ねぎを機械で一気に拾い上げていきます。

特別栽培のメリットに着目し、
17年前から栽培

広大な玉ねぎ畑が眼下に広がる、見晴らしの良い高台。そんな絶好のロケーションに、福井さんの畑はあります。福井さんによると、高台は水はけが良いため、低地に比べると防除が少なくて済むそうです。「少しでも防除をしなくてもいいように、一番条件のいい畑で『環』を育てています。ただ干ばつだった去年は水分不足になってしまい、大変厳しい年でした」と残念そうに話します。
 
就農当時から玉ねぎを栽培していた福井さんが、『環』の栽培を始めたのは17 年ほど前。その一年前には、生産者自らの発案で「北見市玉葱振興会 特別栽培部会」が設立されました。
「当時は食の安全性への動きが社会的に高まっていて、以前から興味があった特別栽培を実践してみたいと思うようになりました。さらに、肥料や農薬を減らすことで栽培技術が上がるなら、従来の玉ねぎ作りにも生かせますし、コストの削減にもつながります。始めることで悪いことは一つもないと考えました」
 

多くの消費者と触れ合って、
知名度をもっと広げたい

福井さんの畑での『環』の栽培は、例年2月20日頃から始まります。ハウス内で種をまき、 苗を育てて4月25日頃に畑に定植します。「『環』の品種は一般的な玉ねぎと同じですが、栽培方法が大きく違います。『環』の場合、収穫までの間に農薬は限られた回数と量しか使えません。『環』の畑は雑草が出やすく、畑に雑草が増えると害虫が増えて、病気や生育不良になるリスクも高まります。結果的に一般的な玉ねぎに比べると、手間も神経も使います」。病害虫の発生を食い止めるために、福井さんは日々畑を観察し、畑に生える雑草を1本1本手で抜いていくそうです。
「JAきたみらいの他の玉ねぎも当然ながら安全・安心ですけれども、それを上回る玉ねぎを消費者の皆さんに届けられることに、やりがいや使命感を感じます」
 
現在部会に所属する生産者は18戸ほど。農薬を減らして質の良いものを作るとなると、栽培スキルがものをいうと福井さんはいいます。
「部会の方々は、やっぱり腕のある人が多いです。若い人もここ何年かで増えてきていますが、みんなが勉強熱心。先輩方のアドバイスを聞いて、腕を磨いています。それぞれが自信を持って作っていて、消費者の皆さんに喜んで食べてもらえるのがうれしいという人ばかりです」と笑顔を見せます。
部会では収穫後に、出荷先の量販店などに出向き、店頭で販売促進活動も行っています。福井さんは、「コロナ禍でここしばらくは実施できていないのですが、積極的に消費者の皆さんと接点を持ちたいです。特別な思いで作っているので、さらに知名度を広げて、『環』をもっと盛り上げていきたいです」と力を込めます。
 
最後に、福井さんにおすすめの食べ方を尋ねたところ「何にでも使えるのが玉ねぎのいいところですが、火を通すと甘みが出ます。我が家ではバーベキューで直火焼にしたり、カレーは玉ねぎを多めに使って作ります。どちらもおいしいです」と教えてくれました。
『環』は、食べることで環境問題に貢献することができる玉ねぎです。現在はJAきたみらいの玉ねぎ生産量の1%にも満たないですが、生産者の活動が、さらに広がっていくことを期待したいです。