坂東 弘一さん
(JA新おたる)
農家の時計

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今回の農家さん

坂東 弘一さん(JA新おたる)
仁木町出身。1992年に農家の三代目として就農。シャインマスカットのほか、さくらんぼ、ぶどう、プルーン、ミニトマトを栽培。現在は、「仁木ハウスぶどう生産組合」の組合長兼「同 シャインマスカット部会」の部会長を務めています。

JA新おたるの特産物
『La・La・shine』とは?

北海道西部に位置する小樽市、仁木町、積丹町、赤井川村の1市2町1村に広がるJA新おたる。中でも仁木町は、明治末期から栽培を続ける、北海道屈指のぶどう産地として知られています。
「仁木ハウスぶどう生産組合」に2017年に発足した「シャインマスカット部会」では、10年ほど前に、皮ごと食べられる高級ぶどうのシャインマスカットの試験栽培をスタート。糖度17度以上をはじめ、房や粒の重さなど、部会独自の規格に見合ったシャインマスカットをブランド化し、20年にブランドを『La・La・shine(ラ・ラ・シャイン)』と命名。道内で唯一、JA単位で商標登録をしブランド名でシャインマスカットの出荷を行っています。出荷期間は、例年10月上旬から1月上旬まで。北海道を中心に出荷されています。
 

■坂東さんの1日(10月上旬の一例です)

収穫は、午前中のうちに
一人で作業

シャインマスカットをハウスで栽培する坂東さんの畑では、例年10月初めに収穫が始まります。
「ぶどうは寒暖差でおいしくなります。ただし、大粒で品質の良いシャインマスカットを作るには、一定程度の温度が必要で、個人的には、ハウスでの栽培が適していると感じています」
収穫の目安は、「主に粒の色と糖度です。緑色の表皮が黄色味を帯びると収穫のサインです。正確には部会で作成したカラーチャートで判断します。糖度は、17度以上と出荷基準が決められているので、一房の上部、中部、下部を糖度計で測定しています」と坂東さんは説明します。収穫期間は約2週間。その間、坂東さんは収穫作業を一人で行っているそうです。「うちは例年1000房程度と生産量が少ないので、一人でも十分。午前中のうちに集中的に作業をします」

寒冷地では難しい
シャインマスカットの栽培に挑戦

札幌から車で1時間ほどの仁木町は、フルーツの栽培が盛んなまち。春から秋にかけてさくらんぼやプルーン、りんごなどの果物狩りを楽しもうと、多くの観光客が訪れます。シャインマスカットの収穫が始まる10月上旬、坂東さんのハウスを訪れると、たわわに実った大粒の美しいぶどうが私たちを出迎えてくれました。
就農当時から生食用ぶどうを栽培する坂東さんに、新品種のシャインマスカットの栽培を始めたきっかけを伺うと、「2代前の生産組合長が町の特産となる新しいぶどう作りを目的に、地域一体でのシャインマスカットの栽培を提案したんです。寒冷地では難しいとされてきた大粒品種のため、うまく育てられるのか不安はありましたが、全国的に人気が高いシャインマスカットを、自分の手で育ててみたいという好奇心が背中を押しました」と当時を振り返ります。
 

大粒に育てるために、
手間を惜しまず

坂東さんによると、シャインマスカットを大粒に育てるには、花が咲き始める6月頃に行う「花切り(花穂整形)」、一房の粒数を調整して間引く「粒抜き」が欠かせないそうです。また、シャインマスカットのセールスポイントの一つである、種なしにするための処理も、一房ごとに2回、手作業で行います。
「従来のぶどうとは、別の作物かというくらい、栽培方法がまったく違います。何倍もの労力と技術が必要なので忙しいですが、作っていて面白みがあります」
 
栽培当初に5本植えた苗は、凍害などに見舞われ、今では2本しか残っていないそうです。坂東さんは技術を磨くために、山形県の産地へ視察に出かけ、さらに部会のメンバーと勉強会を開いて、一年一年努力を重ねてきました。
「苗木を植えてから、出荷できる品質のものに育つまで、5年かかりました。初めて収穫したシャインマスカットは、驚くほどおいしかったです」と坂東さんは表情を緩めます。
 

北海道を代表する
特産品に育てたい

全国的に、シャインマスカットは夏から秋にかけて出回るものが多い中、『La・La・shine』は、秋から冬にかけて出荷されるのも大きな特徴です。
部会に所属する生産者の一部では、温度と湿度を管理して貯蔵性を高める、専用の冷蔵庫を導入。今シーズンは、お正月頃まで出荷できる見込みだそう。1粒15g、一房で650g以上あるものはギフト用に選別され、それ以下のサイズは、パック商品などで店頭に並びます。ちなみに坂東さんによると、シャインマスカットは食べ頃の状態で収穫するため、手元に届いたらすぐに味わうほうが良いとのことです。
 
現在は、生産量が需要に追いつかないほど好評で、「全国の皆さんにお届けできるように、これまで以上に質も量も高められる供給体制を目指します」と坂東さん。「『La・La・shine』は実が締まっていて味に深みがあり、個人的には今まで食べたシャインマスカットの中で一番おいしいと感じています。産地一丸となって、北海道を代表する特産品に育てていきたいです」と笑顔で語ってくれました。