齋田 浩二さん
(JA当麻)
農家の時計

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今回の農家さん

齋田 浩二さん(JA当麻)
当麻町出身。会社員、JA当麻の職員を経て、2016年に農家の三代目として就農。現在は、きゅうりのほかに米を栽培。2023年に「当麻町そ菜研究会キュウリ部会」の部会長に就任。

JA当麻の特産物『きゅうり』とは?

JA当麻がある当麻町は、北海道第二の都市・旭川市に隣接し、ブランドすいか『でんすけすいか』の産地として知られる農業が盛んな町。中でもきゅうりは、収穫量と作付面積で北海道一を誇ります。
50戸の生産者からなる「当麻町そ菜研究会キュウリ部会」では、年に数回、栽培講習会などを実施して、品質の向上に努めています。出荷期間は、例年5月中旬から10月中旬まで、出荷先は約7割が北海道外で、主に東京や大阪に届けられています。
 

■齋田さんの1日(6月中旬の一例です)

収穫は、朝4時から
大人数で作業

齋田さんは、22棟のハウスできゅうりを栽培しています。収穫作業は5月中旬から始まり、10月上旬まで毎日続きます。最盛期は6月下旬から9月中旬。齋田さんのハウスでは、朝4時から、家族を含めて9、10人で作業を行います。
「きゅうりの生長はあっという間で、この時期は1日も休めません。ヘルパーさんの手を借りて、涼しい時間に一気に収穫していきます」
きゅうりの茎にはトゲがあり、葉の表面はザラザラしているため、収穫時には腕カバーと手袋が欠かせません。収穫道具はハサミではなく、きゅうり専用のカッターを使用。親指に装着するリング状のカッターで、一本一本カットしては長さや太さ、曲がり具合など出荷基準に合わせて選別していきます。
「大きく曲がっているものや、色が抜けているものなどは出荷せず、加工品に回ります」と齋田さん。ピーク時には、1日で30tもの収穫量があるそうで、年間で約3000tにのぼります。
 

栽培のスタートは、
前年の秋から

就農前は、JA当麻の職員をしていた齋田さん。当時は、両親が苦労して働く姿に農業の厳しさを感じ、農家とは違う道を選んだと言います。しかしJA職員として地域の生産者と触れ合ううちに、「苦労はつきものだけれども、それ以上にやりがいがありそうだと感じるようになったんです」と就農に至った経緯を話します。
齋田さんによると、きゅうりの栽培は前年の秋からスタートするそうで、重点的に行うのが「土づくり」だと言います。収穫後のハウスの土壌に、籾殻やカニの殻、菜種油のカスなどの有機物と堆肥を加えて、翌年の栽培に備えます。
「父の代から40年以上、同じ土地できゅうりを作り続けてこられたのは、先人たちが知恵を結集してノウハウを確立してくれたおかげです。その方法を受け継ぎつつ、土壌診断も行って、この土地に合うようにアレンジを加えています」
 

定植から収穫まで、
さまざまな手作業が続く

同部会で栽培するきゅうりの苗は、かぼちゃの根に、きゅうりを接木したもの。接木と育苗はJA当麻が担うことで、生産者の作業負荷の軽減につながっていると齋田さんは説明します。
「接木をすると病気に強い苗になります。これまでは生産者がそれぞれ行っていましたが、失敗も少なくありませんでした。うちでは約5500本もの苗を使っており、育苗の手間が省けたことで、栽培を維持・集中できていると感じています」
4月中旬にハウスに定植した苗は、約1カ月後に最初の収穫を迎えます。その間、水やりや温度管理のほかに、芽かき、吊り上げ、棚つくり、枝切り、葉っぱ取りなど、きゅうり栽培ならではの作業が続きます。
「芽かきは、茎の下のほうで伸びてくる小さな芽を取り除く作業です。風通しを良くして、上部に栄養がいくように調整します」と齋田さん。芽かき作業を終えて、ツルがぐんぐん生長してくると紐を使って垂直に吊り上げ、さらに水平に紐を張る棚つくり作業に入ります。それらの作業が終わった後も、随時、不要な枝や葉を取る作業に追われます。
「きゅうり作りは、病気との闘いです。葉を取り除くのは、中まで光が当たるようにするためと、葉に発生する病気を防ぐ意味合いもあるんです」

 

ストレスをかけずに
育てることが大切

齋田さんがきゅうり作りで大事にしていることを尋ねると、次のような答えが返ってきました。
「真っ直ぐで程よい太さのきゅうりが、市場での評価が一番高いんです。ところが、真っ直ぐ育てるのがなかなか難しいんです。きゅうりが曲がる要因はさまざまで、これに気をつければ大丈夫ということはありません。加えて、昼夜の寒暖差が大きいと、きゅうりの芯が空洞になってしまうので、いかにきゅうりにストレスをかけずに育てるか、定植から収穫までどの時期も気を使っています」
スーパーなどの店頭で、きゅうりを選ぶ目安については、「表面にイボがしっかりあって、張りがあるものほど鮮度が良いと思います」とアドバイス。最後に齋田さんは、「当麻町は自然豊かで、水がおいしい町です。そのおいしい水で、心を込めて育てています。ぜひ多くの人に味わっていただきたいです」と笑顔で締めくくってくれました。