島次 良己さん
(JA中札内村)
農家の時計

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今回の農家さん

島次 良己さん(JA中札内村)
中札内(なかさつない)村出身。北海道農業大学校を卒業後、1985年に農家の4代目として就農。枝豆のほか、てん菜、馬鈴しょ、小麦、さやいんげん、小豆を栽培しています。2022年、JA中札内村代表理事組合長に就任。

JA中札内村の特産物『枝豆』とは?

JA中札内村は、北海道十勝地方に位置し、日高山脈を源とする清流・札内川の流域に広がる地域にあります。広大で平坦な土地を生かした畑作を中心に、養鶏や酪農も盛んです。なかでも1983年に栽培が始まった枝豆は、北海道の一大産地。生産者で組織される「枝豆事業部会」とJA中札内村が手を取り合って、播種時期の計画から収穫作業、JAの農産物加工処理施設での冷凍枝豆製造までを行っています。現在、村内で79戸の生産者が483haを作付けし、年間4,500t〜5,000tを加工。冷凍枝豆「そのままえだ豆」や「そのまま黒えだ豆」などの商品名で全国各地と、一部海外にも出荷しています。
また、安全・安心・高品質な枝豆づくりを追求しようと、2019年には食品安全管理の国際規格「FSSC22000認証」を取得しました。
 

■島次さんの1日(9月上旬の一例です)

農作業は早朝と夜。
日中は組合長業務

島次さんは奥様と息子さんの3人で、50haの畑を管理しています。そのうち、約6haで枝豆を栽培。現在は組合長としての業務もあるため、畑仕事は早朝と夜に行います。「組合長として、中札内村の農業全体のことを考えなければなりません。責任も大きいけど、やりがいも大きい。管内の生産者のために、まだまだやることはたくさんあります。それでも、畑に出て作物に触れる仕事は、やっぱりいいですね。作物は手をかけた分、応えてくれるからうれしいし、やっていて楽しいですね」と島次さん。組合員はもちろん、JA職員とも積極的にコミュニケーションを取って、生産者とJAの連携を強めることにも力を注いでいます。
 

チームワークで支える
枝豆栽培

JA中札内村では、枝豆事業部会で栽培する枝豆のほぼ全量を、JAの農産物加工処理施設で冷凍枝豆に加工しています。例年、播種は5月上旬からスタート。JAと部会が決めた日程で、生産者が各々で行います。収穫は8月下旬から9月中旬まで24時間体制。この期間に生産者とJA職員とでチームを編成し、生育の早い地域から順に予め決めたスケジュールに従って生産者を1軒ずつ回り、大型ハーベスターで収穫します。1人6時間ずつ交替しながら、昼夜を問わず作業し、生産者は自分の畑に限らず仲間の畑も収穫。普段はデスクで事務作業を担当するJA職員も、この時期はハーベスターに乗って活躍します。JA中札内村では2005年から大型ハーベスターを所有し、枝豆事業部会と連携して収穫作業を行ってきました。「この体制ができてから、生産者の負担がかなり減り、枝豆を栽培する戸数も増えてきました。生産者とJA職員がこんなに一緒になって頑張っているところは、そう多くないと思いますよ。枝豆と同じくらい、チームワークの良さも、うちのJAのウリかな」と、島次さんは笑います。
 

収穫から3時間以内の味をお届け

枝豆の収穫時期は、農産物加工処理施設での受け入れや加工も24時間体制です。現在の農産物加工処理施設は、2005年に完成。さらに何度か改修・拡張を重ね、現在は、最先端の光学式選別機や自動箱詰めロボットなどが導入されています。
JA中札内村がこだわるのは収穫から3時間以内で冷凍保存する短時間処理。取れたてのおいしさを食卓にお届けするため、収穫した枝豆は素早く選別し、洗浄、蒸し上げ、冷凍保存を行います。収穫期が終わると、出荷数量に応じてパッケージに詰め、「そのままえだ豆」や「そのまま黒えだ豆」などの商品名で、一年を通して流通されます。

 

枝豆の食味は
収穫後の時間が左右

「取れたての枝豆のおいしさを味わってほしい」という思いから、収穫後3時間以内の冷凍保存にこだわってきましたが、そのこだわりを裏付ける研究も行いました。
「研究機関に調査を依頼し、枝豆は収穫の時間帯による食味に違いが出ないことがわかりました。つまり、何時に収穫してもおいしさは変わらないということになります」と島次さん。さらにその調査で、枝豆は収穫後4、5時間を境に食味が落ち始めることも判明したそう。「24時間体制で収穫し、3時間以内に冷凍保存するのは、間違いじゃなかった」。生産者もJA職員も、この調査結果から商品への大きな自信を得ました。
 

自然解凍でそのまま味わうのが一番

生産者、組合長として忙しい毎日を送る島次さんですが、いつも笑顔で冗談を交えながら会話し、周囲を明るくするムードメーカー的な存在でもあります。束の間の息抜きは、仕事の後の晩酌。「ビールにはやっぱり枝豆でしょう」と、自宅にも冷凍枝豆を欠かさないそうです。JA中札内村の冷凍枝豆はほんのり塩味。「自然解凍してそのまま食べるのが一番ですよ」と、島次さんはおすすめします。そして最後に、「ぜひ食べ比べをしてみてほしいですね。おいしさの違いが分かっていただけると思います」と、話す島次さんの笑顔と言葉に、生産者としての自信を感じました。
 
8月初旬の取材後、さっそく自然解凍したJA中札内村の枝豆を食卓に出してみると・・・・・・。「あれ? 今年の枝豆は収穫が早いね」と、家族がおいしそうに次々と枝豆を頬張ります。「実はこれ、冷凍だよ」と教えると、「すごくイキがいい!」と驚いた様子。なんだかこちらまで誇らしげな気持ちになりました。自然解凍しただけなのに。この驚きを、ぜひみなさんも体験してください。