中山 隆さん
(JA道央)
農家の時計

農家の時計 農家の時計

今回の農家さん

中山 隆さん(JA道央)
千歳市出身。会社勤めを経て、農家の3代目として就農し23年。約70haの畑では大豆をはじめ小麦、てん菜、小豆や野菜などを栽培。千歳市畑作生産部会の部会長としても奮闘中。

JA道央の納豆用小粒大豆『ユキシズカ』とは?

JA道央は、北海道の大消費地である札幌市の南東部、石狩平野の中南部に位置し、恵庭市、江別市、北広島市、千歳市をエリアとしています。都市と隣接する自然豊かな農業地帯では、稲作・畑作が地域ごとに特色豊かに営まれ多様な農畜産物がつくられています。
その中でも納豆用小粒大豆『ユキシズカ』は作付面積全道一を誇ります。納豆用小粒大豆『ユキシズカ』の名前とおいしさが、全国の消費者に知れわたり、食卓で愛されていくことをめざし、産地をあげて取り組んでいます。
 

■中山さんの1日(10月上旬の一例です)

天高く、
刈り取りゴールデンタイム

『ユキシズカ』の収穫期、中山さんの一日は日の出前にスタート。「朝ごはんは、『ユキシズカ』の納豆ごはん。ガガッといきます、これが、うまい!」と中山さん。大豆は収穫時の湿気を嫌うので、露がなく日が高い時間帯が最適で、収穫は11時から16時くらいの間だけにしています。
そのため早朝は野菜の収穫などをして、途中から『ユキシズカ』の畑へ。基本は中山さん一人がコンバインに乗りますが、野菜の収穫がない日は奥さんも出動!夫婦で2台のコンバインを動かし刈り取ります。「いい風が吹いてるあったかい時間帯を逃したらもったいない」と、昼食は畑でサッととることも。秋空の下、おにぎりやサンドイッチを大豆畑でいただきます。
逆に雨の日は、『ユキシズカ』の収穫は断念します。野菜の箱詰めや、『ユキシズカ』の収穫のためのコンテナの準備など屋内でできる作業に集中するそう。天気と相談しながら貴重な1日を無駄なく使う。これが中山さんの農家の時計のようですね。
 

収穫日を、
歩き回って手で見極める

取材(2023年9月13日)の前日、大雨が道央圏を襲いました。「昨日のような雨がホント怖いんですわ。でも雨はすぐ止んでくれたし、湿度もあがらなかったね」と、さやを手にホッとする中山さん。さやから水が入ってしまうと、カビがついてしまうこともあります。
収穫適期の見極め方をたずねると「葉が全部落ちて、茎の下の方がヌメっとしていないことかな。さやが茶色く色づきカラカラに乾いているのを見て、そのさやを破って中の豆を指でつぶして水分量を確かめるんです」。最終的には乾燥機で水分量を調節できますが、収穫の段階でもばらつきがないよう見極めていくことがやはり大切。でも畑の状態は、日当たりや水はけなどが場所によってまばらです。何ヵ所も回って豆を手に取って確かめる。そしていくつかあるうちのどの畑をいつ収穫するか決めていく。豆の声をじかに聞こうとするこうした入念な仕事こそが、安定した品質を支えているのでしょう。
さて、取材に訪れた日、畑を見渡せば、葉がまだ付いているところも。「刈り取りは9月下旬、ひょっとしたら10月に入るかも」と中山さんは予想するのでした。
 

数センチ単位の
チャレンジをどこまでも

中山さんの『ユキシズカ』の作付面積は30haもあります。「効率的にやらないと、この畑がもう大変なことになってしまう」。大変なこととは?とたずねると、ズバリ雑草だといいます。大豆栽培において除草はもっとも手間のかかる作業で、作付面積が広ければ広いほど負担も大きくなります。
そこで中山さんは、畝(うね)と畝の間隔を狭める方法をとっています。「ほら、ちょっと狭いでしょ」と、中山さんが指さしたのは、何も生えていない地面。「ここは畝間(うねま)といいますが、今年は50cmまで狭めました。ここが狭いと葉が伸びたとき日陰をつくり、雑草が生えづらくなるんです」。うまくいけば最小限の除草作業ですみ、収量アップにもつながります。でも株が密集しすぎると倒れてしまうリスクも。そこを踏まえて今年は株間(かぶま)のほうを2~3cm広げました。
中山さんにとって今年で十数年になる『ユキシズカ』の栽培ですが、過去には畝間を30cmにしたこともあるし、今年、地域の農家では45cmのところもあるそう。「こういうチャレンジを繰り返して、畑ごとのベストを見つけていくんです。コレ農家の醍醐味かな」と、今年の出来にワクワクソワソワしている中山さんでした。技術と経験を駆使して、毎年、少しでも良くしたいと努力する姿勢が、きっと安定した収量を支えているんですね。

 

食べ比べて納得の、
『ユキシズカ』の納豆

中山さんは、『ユキシズカ』を原料に納豆をつくる本州の工場に行ったことがあります。その時、外国産大豆を使用した納豆と食べ比べをさせてもらいました。「はたして味の差がわかるだろうかと思っていたのですが・・・風味があって甘さもあって、正直驚きました」。そして「『ユキシズカ』が加工しやすい品種であり、JA道央なら安定供給ができるという信頼が前提でしょうが、食べてみて、ああ、これなら納豆メーカーさんが選ぶワケだな」と納得したのだそう。
納豆は、日本の食卓に欠かせない食品ですが、国産大豆の使用比率は決して高くありません。消費者が国産大豆の納豆を積極的に選んでいくようになれば、作付面積が増え、さらに安定供給が見込め・・・と正のスパイラルが生まれます。「まずは、『ユキシズカ』という名前がついた納豆を見たら、ぜひ手にとってほしいですね」と中山さん。おいしく食べてもらうことが農家の何よりの励みになり、それは間違いなく次の栽培へとつながっていく。そんなことを思いながら、秋の陽が降り注ぐ畑を後にしました。