松原 尚則さん
(JAるもい)
農家の時計

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今回の農家さん

松原 尚則さん(JAるもい)
苫前(とままえ)町出身。北海道農業大学校を卒業後、2005年に農家の五代目として就農。現在は、メロンのほか、米、スイートコーン、大豆、ミニトマトを栽培しています。2022年より「とままえ特定蔬菜生産部会 メロン部門」の部長として活躍。

JAるもいの特産物『とままえメロン』とは?

北海道北西部に位置するJAるもいは、留萌管内の天塩(てしお)町・遠別(えんべつ)町・初山別(しょさんべつ)村・羽幌(はぼろ)町・苫前町・小平(おびら)町・留萌(るもい)市・増毛(ましけ)町の8市町村で構成されています。
北海道最北のメロン産地、苫前町で1986年から生産されている『とままえメロン』は、糖度14度以上の赤肉メロン。今年、特許庁の「地域団体商標」に登録された地域ブランドメロンです。29戸の生産者で組織される「とままえ特定蔬菜生産部会 メロン部門」では、地域内の酪農から得られる堆肥を活用した土づくりをはじめ、減化学肥料・減農薬で栽培する「エコファーマー」や、北海道クリーン農業推進協議会が認証する「YES! clean」(北のクリーン農産物表示制度)の認定を受け、厳格な栽培基準のもとで栽培しています。
出荷期間は例年7月上旬から10月上旬まで。年間出荷量約664tの9割は、大阪方面に出荷されています。このほか、JAるもいのECサイトやふるさと納税の返礼品でも購入することができます。
 

■松原さんの1日(8月上旬の一例です)

収穫は朝4時から、
涼しいうちに

メロンの収穫作業は、日の出前の朝4時から始まります。「この時期の日中は、ハウスの中が40度近くまで上がるので、できるだけ涼しい時間に集中して行っています」と松原さん。ハウスでは、メロンの出来を見極めながら、ハサミを使ってテンポよく茎をカットしていきます。収穫したメロンは倉庫に集め、一玉一玉磨きをかけて重量を測り、出荷基準の規格に沿って選別し、箱詰めします。一連の作業は、集荷場の受け入れ時間に間に合うように、松原さんの両親と妻の里美さんのほか、3人のパートさんの7人で役割を分担し、午前中に終わらせます。
午後からは、主に水田の雑草取りや防除作業を行い、気温が下がり始める16時過ぎからメロンの防除作業を行っていきます。
7月から始まったメロンの収穫作業は、例年9月20日頃まで続き、出荷量は年間で約40tにもなるそうです。
 

メロン栽培は、
水の管理が肝心

松原さんが暮らす苫前町は、日本海側から吹き付ける強風を利用した、巨大な風車が立ち並ぶ、風光明媚な町です。 松原さんのハウスは、風の影響を受けにくい内陸部にあり、母・あけみさんを中心に町内で栽培が始まった1986年頃からメロン作りを続けています。
「メロンの栽培は、スマート農業とは程遠く、自動化できるのはハウスの開閉ぐらいです。出荷まで多くの手間がかかるので、就農当時は別の作物に転換したほうがいいと思ったこともありました」と松原さんは振り返ります。「メロンを作りはじめて今年で37作目ですが、ここ5年ぐらいでようやく納得のいく実績・収支をあげられるようになりました。父と母がこれまで作り続けてくれたおかげで、今があると思っています」と話します。
松原さんは、例年2月中旬頃から準備を始め、3月下旬に最初の苗をハウスに定植します。収穫時期が重ならないように、1週間から10日ほど間隔を空けながら6月下旬まで定植を行い、25棟で栽培しています。ハウス1棟は全長約100mあり、1棟だけで約1000玉ものメロンが育てられています。松原さんによると、出荷までに最も気を使うのが水管理だと言います。メロンを大きく育てるには、水分が必要ですが、水をやりすぎると、味がぼけてしまうのだそう。さらに、収穫前には水やりを止めるタイミングの見極めが肝心で、遅れると余計な水分が溜まり、メロンが割れてしまうこともあるそうです。
「水の過不足は、メロンの顔を見ればわかると両親は言うんですが、私はそこまで追いついておらず、まだまだ二人の足元にも及びません」
 

生産者と産地間の連携を強化して、
メロン産地としての信頼に応えたい

メロンの栽培において、大玉で高糖度の果実を作るために欠かせない作業が「摘果(てきか)」です。摘果とは、幼果を間引き、残った果実にしっかりと養分を行き渡らせる栽培方法で、時間と労力がかかるため、生産者にとっては負担が大きい工程の1つです。そこで、松原さんは作業工程を見直し、全体の作業時間が短縮できるように心がけています。JAるもいでは規格外のメロンを加工用として販売する取り組みでも支えています。
 
「とままえ特定蔬菜生産部会 メロン部門」では、生産者同士で情報を共有化することで、品質の向上に努めています。さらに、共和町や新十津川町など、道内のメロン産地の生産者とも情報を交換して、産地間で協力しながらメロンの栽培に取り組んでいます。
「栽培当初から取り引きがある大阪の市場とは現在も交流が続いており、長い時間をかけて信頼を築いています。『とままえメロン』を楽しみにしていただいている消費地をはじめ、消費者の皆さんの期待に応えられるように、産地としてできる限りの努力を続けていきたいです」

 

『とままえメロン』は味が濃く、
香りも強い!

私たちがハウスを訪れた日は、ちょうどメロンの出荷初日。収穫のタイミングは、「メロンの表情を見て判断しています」と松原さん。「葉が枯れてきて、玉の上部にあるリングを見て、青みが抜けて白っぽくなったら収穫のサインです。糖度計で測定して、14度以上あるか確認してから収穫します」と説明します。
近年では、強い日差しからメロンを守るため、収穫の1週間ほど前からハウス内に遮光ネットを張り、日焼けを防いでいるそうです。「特に西日に当たると、虫眼鏡に光を当てたように一点が黄色くなり、そこから腐ってしまうのでネットは必須です」と松原さんは話します。
 
美しい網目模様のメロンを手に、「今年は5、6月が低温続きでしたが、出来はいいです!」と松原さんは笑顔を見せます。「有機質の土壌でメロンを育てるようになってから、メロンの味が濃くなったと感じています。香りも強く、味に深みがあるので、おいしさは保証します」
メロンは、常温で追熟して、お尻を触ってやわらかくなったら食べごろとのこと。最後に松原さんは「苫前町は、北海道で4番目のメロン産地なのですが、道内でもメロンを作っていることがあまり知られていません。多くの人に『とままえメロン』を知っていただけたらうれしいです」と話しました。