神田
勇一郎さん
(JA道北なよろ)
農家の時計

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今回の農家さん

神田勇一郎さんJA道北なよろ
1980年、風連町(現・名寄市)生まれ。名寄農業高校、タキイ研究農場付属園芸専門学校(滋賀県)を卒業後、2001年に就農。真冬に出荷する『なよろ星空雪見法蓮草(ほしぞらゆきみほうれんそう)』栽培の第一人者で、2015年に設立した「なよろ星空雪見法蓮草生産組合」の組合長としても活躍。

JA道北なよろの特産物
『なよろ星空雪見法蓮草』とは?

名寄市は、12月の最低平均気温がマイナス10度、1月〜2月はマイナス15度を下回る極寒の地。そんな寒さの中、『なよろ星空雪見法蓮草』は暖房を一切使わないハウスで育てられます。寒いほど身を守ろうとして糖分を蓄えるため、糖度は高いもので14度にも(生産組合の出荷基準は糖度10度以上)。
生産組合では、えぐみの原因となるシュウ酸を抑える土づくりや、根に土が付きにくい栽培方法を確立。2017年には日本野菜ソムリエ協会が主催する、野菜・果物の品評会「野菜ソムリエサミット」で、最高金賞を受賞。収量とともに注目度も上昇中です。

■神田さんの1日(12月中旬の一例です)

土も凍るほどのハウスの中で、
朝8時から収穫

『なよろ星空雪見法蓮草』の収穫期は、12月中旬~2月。収穫作業は朝8時から行われます。収穫、土払い、選別、計量、袋詰めまですべてハウス内で同時に行うそう。「収穫作業は多い時で6人、袋詰めは8人。人手がかかっています」と神田さん。朝の気温がマイナス10度を下回るような日は、収穫するハウス内を前日から暖めておくのだとか。「ハウスの中といっても、冷え込みが強いとハサミが入らないほど土がカチカチに凍ってしまいます。それと、パートさんたちが風邪をひかないように。本当に寒いんです(笑)」

寒くなるほど甘くなる寒締め栽培で、
冬でも農業を

北海道では、寒さが厳しい冬に、その寒さを利用したおいしい野菜づくりが行われています。寒締めほうれん草は、株が大きくなったらハウスを開けて、外気の寒さにあえてあてることで野菜の糖度を上げる栽培方法をとっています。「寒締め」とは「寒さで引き締めた」という意味の造語だそうです。
道北の名寄市で農業を営む神田さんが、寒締めほうれん草の栽培を始めたのは9年ほど前。「一年中土の匂いをかいでいたくて、冬の間も農業をやりたいと思っていました。そんな時、地元で冬季にほうれん草を作られていた方がいて、食べたらめちゃくちゃ甘くておいしかったんです。でも、その方はすぐにやめてしまって…。雪に強い特殊構造のハウスなら暖房を使わずに栽培できると分かり、やってみようと思ったのがきっかけです」
しかし、豪雪地帯である名寄市の農家の間では、雪によるハウスの倒壊を避けるため、冬場はハウスにビニールを張らないのが常識でした。「親父も“なんで(除雪の手間やお金をかけて)冬にわざわざ(農業を)やるんだ?”とあきれていました(笑)。今でこそ仲間が増えましたが、当時はたった一人。失敗の連続でした」

『なよろ星空雪見法蓮草』の
名前の由来とは?

神田さんのハウスでは、例年9月からほうれん草の種まきが始まります。念願だった仲間も増えて、現在は6戸の農家が『なよろ星空雪見法蓮草』を育てています。
「糖度は(極寒の名寄なので)黙っていても上がります。ただし、寒さは半端ないので、マイナス20度が3日続くとさすがにダメになってしまいます」と苦笑します。「僕を含め、ほかのメンバーも技術的にはまだまだ未熟ですが、収量は一年一年伸びています。目標値にはまだ到達しておらず、毎年新しいチャレンジを続けています」

 

ところで、この『なよろ星空雪見法蓮草』という個性的なネーミングも、もちろん神田さんが名付け親です。
「作り始めた当時は、夜間にヘッドライトをつけて収穫作業をしていました。その時見上げた星空がめちゃくちゃきれいで、ハウス内もビニールについた霜がキラキラ輝いてきれいだったんです。消費者の方からは、素敵な名前ですねといわれることが多いですが、市場担当者からは長すぎるといわれます(笑)」

糖度はスイーツ並み、
しゃぶしゃぶがおすすめ

目を凝らしてみると、ほうれん草の葉の表面に白い粉のようなものが浮き出ているのが分かります。「これはシュウ酸といって、えぐみの成分です。寒さに当たると水分と一緒に排出されます」と神田さんは説明します。「これが出てくれないと僕らは困るんです。肥料をやるほどえぐみとして残るので、僕らはえぐみを減らすために、最小限の肥料で育てています」

 

取材当日は収穫前でしたが、ほうれん草を生のまま試食させてもらいました。
特有のえぐみはまったくなく、茎は甘みが強くてびっくり。「これからまだまだ甘くなりますよ」と神田さん。『なよろ星空雪見法蓮草』の出荷基準は糖度10度以上、個体によってはメロンやスイカに匹敵するほど糖度が上がるそうで、「甘みの強さは名寄産ならでは。一口食べれば分かっていただけるはずです」と胸を張ります。
神田さんのおすすめの食べ方は、しゃぶしゃぶとのこと。「豚肉と相性がいいですし、名寄はもち米の産地なので、薄切りもちもぜひ一緒に。あくまでも、ほうれん草が主役のしゃぶしゃぶにしてください(笑)」
商品が店頭に並ぶのは、12月中旬から。地元のスーパーのほか札幌市内でも購入可能です。