仙北 要さん
(JA南るもい)
農家の時計

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今回の農家さん

仙北 要さん(JA南るもい)
高校卒業後、土木や自動車業界の仕事を経て、2002年、農家の三代目として就農。増毛町で、りんごのほか、さくらんぼ、桃、梨、プルーンの果樹園を営む。2018年から「増毛町果樹協会」の会長を務める。

JA南るもいの特産物『りんご』とは?

北海道の北部、日本海に面する増毛町、留萌市、小平町の3つの町で構成されているJA南るもい。農畜産物の生産が盛んで、中でも増毛町は、日本最北のフルーツの里として知られています。明治の初期から栽培されているりんごは、昼夜の寒暖差が大きい気象条件を生かし、色づきが良く、糖度がのっている点が特徴。町内の果樹生産者が組織している「増毛町果樹協会」では、化学肥料や化学合成農薬の使用を必要最小限に抑えた、環境に優しいりんご作りを行っています。
 

■仙北さんの1日(9月下旬の一例です)

朝から晩まで、
収穫と葉摘みで大忙し

仙北さんの果樹園では9月中旬以降からりんごの収穫が始まります。収穫作業は朝8時から17時まで。家族とパート従業員の8人前後で作業を行います。「早朝から作業を始める果樹園もあるので、うちは遅いほうです」と仙北さん。仙北さんによると1本の果樹からとれるりんごは、20キロのコンテナで2コンテナほどにもなるそう。収穫後は計量し、1個当たりの重量で4Sから5Lまでの選別を行います。

約700本、
十数品種のりんごを栽培

さくらんぼや桃、梨など、さまざまな果実が実る増毛町。中でも多くの果樹園が点在する暑寒沢(しょかんざわ)地区は、“りんご回廊”と呼ばれる街道があるほどりんごの栽培が盛んです。その街道沿いにある仙北さんの果樹園では、約700本、十数品種のりんごが栽培されています。
「就農当時と比べると、品種は4倍近く増えています」と仙北さん。その理由は、「収穫の期間をできるだけ長くしようと、実りのタイミングが早いもの、遅いものを組み合わせていくうちに、自然に増えていきました」と話します。現在仙北さんが出荷しているりんごの中で、一番収穫が早い品種は『つがる』。一番遅いのは、積雪前の11月上旬に収穫できる『ふじ』とのこと。
樹齢20年前後、3mほどの高さの木々がずらりと並ぶ中で、鉢植えの小ぶりな果樹も見つけました。仙北さんは「9月上旬に収穫できる『恋空(あおり16)』や『華宝』も試験的に栽培中です。今後は早く収穫できる品種を増やしていきたいです」と意欲を見せます。

3つの異なる作業で
りんごを色づけ

収穫目前の9月上旬は、りんごが色づいてくる時期です。りんごにまんべんなく色をつけるためには、いくつかの作業が必要になります。その一つが「葉摘み」です。果実全体に日光が当たるように、りんごに密着している葉を一枚一枚摘み取っていく作業です。
「色づきはもちろん大事ですが、葉を取りすぎると栄養分が果実に行きわたらなくなり、糖度も下がりがちになるので、最小限にすることが大切です」と仙北さんは説明します。
日光が届きにくい底面は、光を反射させるシートを樹の下に敷いて、色づきを促します。総仕上げは「玉回し」と呼ぶ作業で、果実を優しく回転させて北向きの面にもまんべんなく色がつくように調整します。
「回す際に一番気を使うのは、りんごを落とさないようにすることです。特に『つがる』と、『旭』は、ちょっと触れただけでも落ちてしまうので余計に神経を使います」
このように、地道で丁寧な作業によって、りんごの品質は高められています。

おいしいりんごは、
お尻が黄色い

収穫の判断は、「見た目の色づきと、自分の舌で確かめます」と仙北さん。りんごは完熟のタイミングで収穫するので、大半の品種はもぎたてを食べるのが一番おいしいそう。品種によって味わいは違うものの、おいしいりんごの見分け方は、「お尻が黄色っぽいものを選ぶといいですよ」とアドバイスします。
ちなみに、仙北さんの好きな品種を尋ねると、「個人的に一番食べやすいと感じるのは『ふじ』ですね。果実が硬めなのですが、最近は硬いりんごを好む人が多いです」との答えが。増毛町を代表するりんごは?という問いには「収穫量が一番多いのは『つがる』ですが、逆に収穫量が減っている『旭』は、年配の方に根強い人気があります。年代によっても違うかもしれませんね」と付け加えます。
 
苗から出荷できる果実になるまで、約10年かかるというりんご作り。「りんごを大きくさせるのも、糖度を高めて蜜を入れるのも、すべては日光をよく当てて育てることに行き着きます。だからこそ冬の間の剪定作業にも手を抜かず、多くの人に喜ばれるおいしいりんごを作り続けていきたいです」と熱意を込めて話してくれました。