高橋宏樹さん
(JA帯広かわにし)
農家の時計

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今回の農家さん

高橋宏樹さん(JA帯広かわにし)
高校卒業後、自動車整備の仕事を経て、2000年に農家の四代目として就農。現在は長いものほか、小麦、てん菜、小豆、玉ねぎなどを栽培。2019年から「帯広市川西長いも生産組合」の副組合長を務めています。

JA帯広かわにしの特産物『十勝川西長いも』とは?

1971年から栽培を始め、2006年に地域団体商標、2016年に地理的表示(GI)保護制度に登録された地域ブランド作物。現在ではJA帯広かわにしのほか、近隣の8つのJAでも生産されており、長いもの産地としては全国でも最大規模を誇ります。収穫時期は秋と春の2回。春に種子を植え付け、秋に収穫する「秋掘り」と、土の中で長いもを越冬させ、翌年の春に収穫する「春掘り」があり、日本全国や海外へ1年中出荷しています。
 

■高橋さんの1日(11月上旬の一例です)

朝4時から、
重機で掘り取り作業

長いもを収穫する方法はいくつかありますが、高橋さんの畑では、1本1本、人の手で抜き取ります。そのためにまず、長いもが植えられている列と列の間を重機で掘削し、人が入るための溝を作ります。その作業がまだ日が昇る前の朝4時から始まります。収穫の3時間も前から作業する理由は、「作業は10人ほどで行い、抜き取る人はベテランばかり。前もって掘っておかないとすぐに追いつかれてしまうんです」と高橋さん。重機の操作は、誤って長いもを傷つけないように慎重に行っていきます。

地域ブランドを、
地域統一のルールで守る

高橋さんの畑を訪ねたのは、収穫直前の10月下旬。「今年の収穫は11月1日以降と決められているんです」と高橋さんは説明します。『十勝川西長いも』は、栽培する9JA内で毎年定期的に品質調査を行い、長いものつるを切り落とす日や収穫日を統一しています。
「ブランド名が大きくなればなるほど、責任も重くなります。評判を落とさないようにルールを決めて品質を守っていくことが大切です」と高橋さんは力を込めます。
例年2月末から作業が始まるという長いもは、見た目同様に生育期間が長いのも特徴。さらに、機械化が難しい作業が大半で、種いもの植え付けから収穫までほとんどが手作業で行われています。
「長いもは、地中深くまで育つので、石が埋まっているような土壌だと栽培できません。限られた土壌でしか作れない作物なんです。収穫までにかなりの労力がかかりますが、作れるだけでも価値があります。作りたくても作れない方もたくさんいるので、自分は恵まれていると感じます」

世界最高レベルの
安全品質が強み

高橋さんに『十勝川西長いも』の一番の強みを尋ねたところ、すかさず「品質ですね」と答えが返ってきました。「『SQF(Safe Quallity Food)』の認証を、JAの選果施設だけではなく生産者も取得しているのは全国でも例がないと聞いています。ですから、品質には自信があります。」と付け加えます。
「SQF認証」とは、安全で高品質な食品であることを示す国際規格で、審査基準は世界最高水準なのだそう。高橋さんは保管場所の衛生管理のほか、農薬や肥料などの使用量も細かく記録に残し、管理を徹底しているといいます。また、選果場は、食品衛生管理の国際的認証制度である「HACCP」の認証も取得しており、「安全に関しては、これ以上ないくらい厳しく管理している自信があります」と高橋さんは胸を張ります。

安全品質の長いもは、
ジュースにしてもおすすめ

長いも本来の旬である「秋掘り」と、越冬させて収穫する「春掘り」。実際のところ、味の違いはどこまであるのでしょうか。高橋さんは「越冬して甘みが出るという人もいるけれど、僕は正直なところ分からないです(笑)。大きな違いは特に感じません」と話します。2度の収穫のおかげで、1年を通して味わうことができる『十勝川西長いも』。全国各地に出荷されているので、地元のスーパーなどで出会える確率も高そうです。高橋さんは、「天候が相手なので毎年同じとはいきませんが、未来につなげていくためにも、できる限り安定的に生産して、提供できる努力を続けたいです」と締めくくってくれました。
 
ちなみに、高橋さんの一番好きな食べ方は山かけと聞き、さっそくすりおろして味わってみました。粘りは程よく、エグ味のない上品な味わいが生食にぴったりだと感じました。長いもが健康的な食材として珍重されている台湾では、ジュースにして味わうのが人気なのだそう。皆さんも安全品質の長いもで、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
 
 
※この取材は10月下旬に行いました。