食材の無駄を減らす、冷蔵庫の収納術。
冷蔵庫の中をどう整理すると、食品ロスを減らせるのか。生産者と一緒に、専門家のノウハウを教えてもらいました。
広沢かつみさん(左)/札幌市出身。整理収納アドバイザー、食品ロスマイスタ講師。食料保存法や時短家事、冷蔵庫、キッチンの整理収納の大切さを広めている。国内外での講演や著書多数
中川苗保子さん(右)/江別市出身。1983年、結婚を機に長沼町で就農。現在、種子馬鈴しょ、種子大豆、加工用スイートコーン、小麦を生産。2021年、JA北海道女性協議会会長に就任
冷蔵庫整理は「見える化」が肝心
毎日の生活で食品ロスを減らす一番の近道は、冷蔵庫の整理と「見える化」です。
「基本となるのが①食材をなるべく詰め込みすぎないこと。②仲間をまとめて、置く場所を決めること。③収納容器は、中身の見える透明なもので統一することの3つです」
このように説明するのは、整理収納アドバイザーの広沢かつみさん。広沢さんがこれまでにアドバイスをしたお宅は、実に2000軒以上。「冷蔵庫の中を見せていただくと、棚の奥に入っているものを把握しきれていない人がほとんどです。家族構成にかかわらず、まずはできる限り7割程度の収納を心がけるところから始めてみてください」。
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「容器やトレーは100円ショップで買えるものばかりです。さらに定期的なお掃除で、きれいな冷蔵庫をキープしたいですね。見える化すると、普段全く使っていないものまで見える化されるので、無駄なものを買わなくなります」と広沢さん
保存容器はトレーでまとめる
生産者で、JA北海道女性協議会の会長を務める中川苗保子さんは、日々家事もこなす主婦でもあります。地元産の大豆と米で毎年味噌造りを行うなど料理好きでもあるそう。
「我が家は山奥にあるわけではないですけれど、買い物に行けないことが多く、まとめ買いをしています。食材は無駄にせず、作りすぎたら小分けにして冷凍します。冷蔵庫内は少なく、冷凍庫はぎっしりを常に心がけています」(中川さん)
広沢さんの冷蔵庫の中で、中川さんが着目したのは、トレーを使った収納法。「保存容器をバラバラに置かないことが収納のコツなんですね。まとまっていて探しやすい上、見た目も美しいです」と感心しきり。「一つの動作で、パッと奥まで取り出しやすいことが大事です」(広沢さん)。
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冷蔵庫とは逆に、冷凍庫は隙間がないほうが効率良く冷えるそう。立てる収納で見やすく
早く食べるものは自分の目の高さに
広沢さんによると、最上段は人によって奥まで手が届かないため、1度取り出すと元に戻さないような缶ビールなどの飲料や、長期間常備する味噌などが置き場所として向いているそうです。
最も見やすい中段には、常備菜や惣菜、早く食べたい納豆や豆腐などが適していると言います。保存容器の選び方については「基本は透明なものがいいですが、にんにくなど匂いが強いものを保存する際は、匂いが残りにくいガラスやホーローが適しています。素材が違っていても、容器のふたの色を同色でそろえると、より整頓されて見えるのでおすすめです」(広沢さん)。ドアポケットは開けるたびに庫内の温度が上がるので、バターや卵は避けて、調味料類を置くといいそうです。
野菜は紙袋に保存干し野菜も活用
野菜室の収納には、紙袋が大活躍します。「野菜くずが庫内にたまらず、さまざまな形状に合わせて収納しやすいのが利点です。さらに野菜を立てたり紙で包んだりと、保存法にひと工夫するとより長持ちします」(広沢さん)。
「生産者としては、きれいに収納されていると、食材を大事に扱っていただいているようで、うれしいです。主婦としては野菜くずの汚れが気になっていたので、紙袋はいいですね。たくさん余っているので、さっそくやってみます」(中川さん)
冷凍庫内は、新しい食材を奥に入れ、手前から使うなどルールを決めるといいそう。「保存袋に日付を書かなくても管理しやすくなり、袋も使い回せます」(広沢さん)。
「私はイライラすると、玉ねぎをみじん切りにして冷凍するのがストレス解消法です(笑)。忙しい時は、皮をむき1個丸ごと冷凍。そのままスープに使います」(中川さん)
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野菜室は紙袋のほか牛乳パックを使い、立てて収納すると劣化防止だけでなく省スペースに
冷蔵庫以外での食品ロス対策として、二人が実践しているのが干し野菜です。「余り野菜の無駄をなくせ、保存もききます。すぐ煮えるので時短にもなります」(広沢さん)。
「甘みも出るので、干した大根を酢の物にすると、砂糖が少なめでもとってもおいしいです」(中川さん)
冷蔵庫がきれいになって生ごみが減ると、毎日が快適になりそうです。
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広沢さん愛用の干しかご
「冷蔵庫整理は、計画的な買い物とそろえた収納グッズできちんと収まります。 開けたとき、キレイ!と思えるように実践すると、より楽しめると思います」(広沢さん)
「丹精込めた農作物を丸ごと食べて、元気に過ごしてもらえたらうれしいです」(中川さん)
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常温保存の野菜も一カ所にまとめて。「収納法を考えたり、ものが少ない生活を実践しているのは、結局、家事を手抜きしたいからなんです。ズボラな私でもできるので、皆さんもきっとできます」と広沢さん