努力も日本一、北海道の玉ねぎ。
「通年出荷を通して、選ばれる
産地であり続けたいです」


長期貯蔵の導入で通年出荷が可能に
富良野市、上富良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村の1市3町1村に広がるJAふらのは、1年を通して玉ねぎを出荷する、道内屈指の産地です。JAふらの産の玉ねぎは、例年7月下旬から10月上旬に収穫され、年間の出荷量は約9万トンにも上ります。
JAふらの販売部青果第1課長の本間利史さんは、「出荷が始まるのは例年7月下旬頃からです。翌年の7月上旬まで出荷は続き、在庫がないのは1週間から10日ほど。ほぼ年間を通して出荷しています」と説明します。
通年出荷を可能にしているのは、収穫から半年以上経っても鮮度を保持できる、CA貯蔵庫などの存在です。CAとは、Controlled Atmosphereの略で、空気中の酸素・二酸化炭素・窒素などのバランスや温度・湿度を調整し、作物を休眠状態にして発芽や発根を抑えて品質を保持する長期貯蔵法。JAふらのでは、2006年に全国で初めて玉ねぎで実用化しています。
一方で、倉庫内にエチレンガスを充填するエチレン貯蔵もCAと同様の効果があります。そこで同JAでは、CA貯蔵庫、エチレン貯蔵庫、保冷庫、保管倉庫(常温)の4種類の貯蔵庫を使い分けて、玉ねぎを通年出荷できる体制を築いています。
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CA貯蔵庫の収容能力は、6720トンほど。玉ねぎのコンテナで4800基分にもなります
規格外品は加工工場で活用
「通年で玉ねぎを出荷できるようになったのは、ここ4、5年ほどです。CA貯蔵庫の導入当時は鮮度保持の期間が未知数だったので、年月をかけて少しずつ検証していきました」と本間さん。「その上で、生産者の皆さんが収穫時期の早い品種と遅い品種の作付を計画的に進めてきたことが、通年出荷を確立できた一因だと思います」と念を押します。
CA貯蔵庫のすぐ近くには、玉ねぎ専用の加工工場が併設されています。自前で加工工場を完備しているのは、道内のJAでも珍しいのだそう。加工工場を設けた経緯について本間さんは「平成13年と14年に、玉ねぎの産地廃棄を経験したことが要因の一つです」と説明します。
「玉ねぎの主産地として、多様なニーズに応えるため、また生産者が作った玉ねぎを規格外品まで有効活用するために、加工事業を手がけることが産地としてできることだと考えました」
むき玉ねぎやカット玉ねぎ、ソテーなどに処理された商品は、同JAの加工食品に使用するほか、全国の食品メーカーや外食チェーンに出荷され、さまざまな食品に使われています。
「通年出荷の需要の高さは、外食産業や食品メーカーの方々からの声で実感しています」と本間さん。「これまでふらの産は3月までしか提供できませんでした。同じ玉ねぎでも、産地が変わると味なども変わってしまいます。同じ産地のものを長期間使えるメリットは大きいのではないでしょうか」と分析します。
JAふらのでは、来年度に玉ねぎを人工知能カメラなどで選果する、国内初の施設を稼働予定。
「年間を通じて供給できることは、産地として最大の強みです。より一層品質を安定させ、多くの皆さまに選ばれる産地であり続けたいです」
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(上)コンテナの玉ねぎは、昨年収穫されたもの。半年以上経っても鮮度を保っています (下)加工工場内の作業の様子。玉ねぎの皮むきは、ほぼ手作業で行われています