Vol.44
【特別編】
有限会社大塚ファーム
5代目後継者
大塚 悠生さん

わたし × 農業

私が農業に恋した理由
北海道の高校、専門学校、短大、
大学では、たくさんの学生さんが
農業を学んでいます。
農業のどんなところが魅力?
学んでみて知った醍醐味は?
好きだけど大変と感じることは?
青春ど真ん中の日々での実感、
将来の夢などを聞いていきます。

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有限会社大塚ファーム 大塚悠生さん

1913年に悠生さんの高祖父が入植し、耕した土地を代々受け継ぐ大塚家。入植から100年目の2012年、祖父から経営移譲を受けた父が法人名を有限会社大塚ファームに変更し、次の100年に向けて新たなスタートを切りました。現在、約18haの耕地と60棟のハウスを所有し、ミニトマトとさつまいもを主軸に計20品目の野菜をすべて有機JASで栽培し、さらに米づくり、加工品製造も行っています。従業員の通年雇用、農福連携にも力を注ぐなど、先進的な取り組みは全国の農業者から注目を集めています。

有限会社大塚ファーム
068-1100 新篠津村第36線南42番地
TEL:0126-57-2573
https://www.otsukafarm.com/
https://www.instagram.com/otsukafarm.organic/

  • 大塚さん

    大塚さん

  • GREEN編集室

    GREEN編集室

GREEN編集部 「私が農業に恋した理由」も今年で5年目。これまでにご出演いただいた皆さんが、卒業後、どのような目標や夢を持って農業に携わっているのかをお聞きしようと、今回は特別編でお届けします。訪ねたのは、札幌市から車で約50分の新篠津村にある有限会社大塚ファームの5代目後継者、大塚悠生さんです。こんにちは。いい色に日焼けしていますね!
2020年7月17日公開 「私が農業に恋した理由」Vol.13 
北海道岩見沢農業高校 大塚悠生さんの記事はこちら>

大塚さん はい。おかげさまで(笑)。今日は天気が良くて気持ちがいいですね。ようこそ、いらっしゃいました。

GREEN編集部 悠生さんは、岩見沢農業高校を卒業してからは、どうされていましたか?

大塚さん 岩見沢農業高校を卒業後、種苗メーカーが運営している滋賀県にある専門学校へ進みました。中学の時にオープンキャンパスに参加し、この学校に進学すると決めていました。野菜の栽培に重点を置いたカリキュラムなので経験を積めますし、全寮制で規律が厳しいことから、自分を追い込むにはいい環境だと。そう覚悟して入学したのですが、はじめの1週間は厳し過ぎて、悔しくて毎日泣いていました。あとでわかったんですが、入学したばかりの新入生に厳しく接することはこの学校の伝統だそうです(笑)。

GREEN編集部 帰りたいとは思いませんでしたか。

大塚さん 思いませんでした。仲間と切磋琢磨するアツい日々が楽しくて。2年生になると、将来経営者になるための勉強になればと、立候補して、50名ほどの寮生をまとめる寮長になりました。しばらくして、僕は寮生たちに「ありがとう」、「ごめんね」、「これ、頼む」といった言葉をよく使うことに気づきました。そこで、わかったんです。自分は周りの人と一緒に前へ進んでいこうとするタイプのリーダーであり、父のように「俺についてこい」と旗を振るワンマン型ではないんだと。

GREEN編集部 悠生さんらしくあるための経営者像が見えたんですね。学校を卒業し、20歳で就農されてたのですか。

大塚さん そうです、今年22歳になります。昨年は、AFJ日本農業経営大学校の研修プログラムに参加しました。農業経営、人材育成、マーケティング、ブランディングなどを学べるオンライン講義と合宿、視察が網羅されていて、ここでの学びと出会いによって視野が格段に広がり、やるべきことが明確になりました。やっぱり、外に出ないと成長しないですね。その後、関西へ2回、オーストラリアには4カ月滞在して10カ所を視察してきました。

GREEN編集部 10カ所とはすごいですね。視察先はどのように調べ、アプローチしたんですか。

大塚さん 昨年の今頃、大塚ファームに国際農業奨学金制度を運用する団体が視察に来られました。その一員だったオーストラリアの方に、「僕は有機農業が盛んなオーストラリア、北海道に気候が似ているニュージーランドの農業を体感してみたい」と英語で伝えたところ、視察先のリサーチや紹介に力を貸してくださいました。

GREEN編集部 悠生さん、積極的ですね!

大塚さん 自分から行動しないと、与えられない。自分から取りに行かないと、身に付かない。そういう思いで、自分で自分を追い込んでいる面はありますね。

GREEN編集部 農作物の生産ももちろん一生懸命に取り組んでいると思いますが、悠生さんは主にどの作物を担当しているんですか。

大塚さん きゅうりとトマトです。有機栽培はデータが少ないので、経験を見える化することが必要であり、重要です。今年からトマトのハウス6棟を使って、水や肥料の管理を中心とした「データ活用型有機農業」にチャレンジしているところです。

GREEN編集部 悠生さんは前回出演の記事にもあったように、高校生の頃からミニトマトの試験栽培をするなど、新しい技術や栽培法に対して関心が強かったですよね。プロになったいま、農産物の生産に対してどのように考えていますか。

大塚さん 農業は、大きく言うと、植物が育ちやすい環境をつくることだと思います。そのためには、有機だからこそ土づくりが重要なわけですが、土の中にいる微生物は目に見えません。また、肥料は味に影響を与えますが、味も見えません。見えないものを相手にする難しさを解き明かしていくには、経験が大事なんだろうとつくづく感じています。いまは、わからなければいけないことがわかってきた段階です。

GREEN編集部 5代目後継者として、今後、大塚ファームをどのようにしていきたいですか。

大塚さん 近い将来、規模拡大することを前提に、現在20ある品目の集中と選択を図ろうと、品目ごとの労働生産性を割り出す取り組みを進めています。また、規模を拡大すると、目が十分に行き届かなくなることも予想されるので、大塚ファームの考え方や生産・管理方法に共感してくれる就農者を募り、その方々の独立を支援していける体制も作っていきたいと考えています。

GREEN編集部 頼もしいですね。

大塚さん 価値と価格の適正な関係を築くために、「顔が見える農業」から「取り組みが見える農業」へ進化させることも僕の仕事です。そのためには、大塚ファームのビジョンを立て、それに沿った農業を行うことはもちろん、僕たちの思いや日々の取り組みを発信していく必要があります。その一例として、情報が個人に届きやすいSNSを工夫しながら、活用しています。

GREEN編集部 最後に、悠生さんのモットーと夢、そして北海道で農業を学ぶ後輩たちにメッセージをお願いできますか。

大塚さん 夢は、「アジアを代表するオーガニックファーマー」。笑っちゃうような、どデカい夢ですが、僕は真剣です。日々、いいことばかりではありませんが、夢を持って努力すれば、「今日も最高の1日」になると信じています。後輩たちに伝えたいことは、いま、やってみたいことがあるなら、本気でやってほしいということ。それが自分に向いているかどうか、悩んだり、自信を持てなかったりすることもあると思いますが、夢中になれることをとことんやって、そのことを自分に向いているようにする。それしかないです。何かをみつけたなら、そのことを大切にしてください。

GREEN編集部 力強いメッセージをありがとうございました。今後のご活躍に期待しています。今日はありがとうございました。