こめ油

おいしいの研究

こめ油

vol.17

研究者:荒川 義人さん

研究者:荒川 義人さん

農学博士。札幌保健医療大学 保健医療学部 学部長、栄養学科 教授。専門は食品科学で、近年は玉ねぎや韃靼そば、レッドビートなどの機能性について研究。札幌黄ブランド化推進協議会会長、北海道食育コーディネーター会議座長など、北海道の食に関わる組織での役職多数。趣味は野球で、北海道大学野球部OB会会長も務めている。

北海道のお米から生まれた油で、
暮らしを健やかに

近年、オリーブ油やアマニ油といった健康志向油の市場規模が拡大しています。ホクレンでも、その1つに数えられる「こめ油」を長く販売してきましたが、2022年8月に「こめ油」では国内初となる「機能性表示食品」(※)としてリニューアルしました。これまでと変わらず、安心の北海道産の米ぬかだけを使用しており、その名もホクレン「北海道こめ油」です。そこで今回は、こめ油の特徴や、おすすめの食べ方などを、食品科学を専門とする荒川義人教授に聞きました。
※事業者の責任で、科学的根拠を基に、特定の保健の効果が期待できる機能性を商品パッケージに表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です

室温で液体か固体か。何が違うから?

室温で液体か固体か。
何が違うから?

───── 食用油といえば、サラダ油、ごま油、オリーブ油など、さまざまな種類がありますが、荒川教授、まずはその分類から整理させてください。

 

荒川教授: 大きくは、植物性と動物性に分かれます。一方で「油脂」という言葉があります。これは室温で液体として存在する「油」と、固体として存在する「脂」を合わせたもの。植物性は「油」が多く、動物性は「脂」が多いですが、たとえばアブラヤシから得られるパーム油は室温で固体だったり、魚油は室温で液体だったりしますので、一概には言えません。

 

───── 室温で液体なのか固体なのか、その違いはなぜ生まれるんですか?

 

荒川教授: 脂質の主要な構成要素である脂肪酸の種類が、溶けにくい<飽和脂肪酸>か、溶けやすい<不飽和脂肪酸>かで決まります。牛や豚の脂質は<飽和脂肪酸>の割合が多いので溶けにくく、植物や魚の脂質には<不飽和脂肪酸>が多いので溶けやすい。そして、これらの脂肪酸が人体にどのような作用をもたらすかという研究がどんどん進んでいます。

複数の食用油で、脂肪酸をバランスよく

複数の食用油で、
脂肪酸をバランスよく

───── なるほど、脂肪酸の種類が油の性質に大きく関わっているんですね。今回は、玄米から精米する際に出るぬかから抽出してできる「こめ油」が主役ですので、植物油の主成分である<不飽和脂肪酸>について教えていただけますか。

 

荒川教授: 代表的なものは3つあります。最初に注目されたのは、コレステロールを下げる働きがある<リノール酸>です。大豆油やコーン油などに多く含まれています。そしてアマニ油やえごま油などに多い<α-リノレン酸>。血栓の防止作用や抗アレルギー作用などが確認されています。もう1つが<オレイン酸>。オリーブ油などに多く含まれ、悪玉コレステロールを増やさない働きがあります。

 

───── それぞれの植物油によって、含まれる<不飽和脂肪酸>の種類や割合が異なるのですね。

 

荒川教授: はい、たとえば「こめ油」は、<リノール酸>と<オレイン酸>が同じくらいの割合で含まれています。いずれにせよ、1つの油だけを偏って使うのではなく、いろいろな油を使うことによって、摂取する脂肪酸のバランスを整えることをおすすめします。

こめ油に入っている、体にやさしい成分

こめ油に入っている、
体にやさしい成分

───── 複数の食用油を上手に使い分けることが健康づくりにつながるんですね。我が家の植物油チームにも、新たに「こめ油」を加えたくなってきましたが、脂肪酸に関すること以外で、「こめ油」がほかの植物油と異なる点とは?

 

荒川教授: いくつか特徴的な栄養成分が含まれています。まず<トコトリエノール>の含量がほかの植物油に比べて高いです。これはスーパービタミンEとも呼ばれていて、私たちの体の細胞が酸化して傷んでしまうのを防ぐ抗酸化作用が通常のビタミンEよりも強いんですね。

 

───── 若返りに欠かせない!?

 

荒川教授: 私はそういう言い方は好きじゃないですが(笑)。でも健全な細胞を維持するために不可欠な成分だと言えます。さらに、<植物ステロール>を多く含んでいるのも、ほかの植物油と違うところ。この成分はコレステロールと同じような性質を持っているため、コレステロールが体内に吸収されるのを邪魔してくれるんです。その結果として、コレステロール値を下げる作用が証明されています。

お米ならではの栄養成分、<γ-オリザノール>

お米ならではの栄養成分、
<γ-オリザノール>

───── なるほど、こめ油には<トコトリエノール>と<植物ステロール>という栄養成分が含まれていると。

 

荒川教授: そして最後にもう1つ、<γ-オリザノール>という成分も忘れてはなりません。稲の学名はオリザ・サティバというんですが、そこから名付けられているんですよ。

 

───── つまり、まさにお米ならではの成分ということですね!

 

荒川教授: そうです。抗酸化性が強く、もう50~60年前から医薬品や化粧品などに活用されてきました。食用油として摂取する量であれば、中性脂肪やコレステロールを下げることが実証されています。

 

───── 今回取り上げている「北海道こめ油」は、この<γ-オリザノール>を機能性関与成分とした、こめ油では国内初の「機能性表示食品」です。健康の維持・増進に役立つ機能性を表示できる食品ということで、実際にパッケージには「本品には血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能が報告されている成分を含みます」との記載があります。私たち消費者は、こうした「機能性表示食品」をどのように生かしていけばいいのでしょう。

 

荒川教授: さまざまな成分の働きを知り、自分に合った食品を選ぶことは、これからますます大事になってくると思います。食生活を改善し、健康を維持するうえで、機能性表示を有効に活用していただきたいですね。ただし、こうした成分を過剰に摂るのもよくありませんから、自分の食生活を冷静に見つめながら選ぶようにしてください。

油を使うことで、栄養吸収を効率的に!

油を使うことで、
栄養吸収を効率的に!

───── ところで教授、食生活に油を上手に取り入れる方法はありますか?

 

荒川教授: ビタミンA、D、Eは油に溶けやすい性質があるんですよ。にんじん、かぼちゃ、トマトなどに含まれる<β-カロテン>は体内でビタミンAに変換される、いわばビタミンAの一種ですね。そのため、トマトはドレッシングといっしょに食べることで<β-カロテン>が溶け出し、体内に吸収されやすくなります。油なしの場合の3倍くらい吸収率が高まるんですよ。にんじんはきんぴらやソテーに、かぼちゃは天ぷらなどの揚げ物になど、油を使って調理することで、素材に含まれる栄養成分を効率よく取り入れることができます。

 

───── 風味にクセのない「こめ油」はドレッシングに向いていますし、油切れがよくカラッと揚がるという特徴もあるようですから、いろいろなレシピに活用できそうです。

 

荒川教授: たしかに「こめ油」は香りも味もマイルドですよね。抗酸化性が強いので、揚げ物を何度か繰り返してもヘタりにくいと思いますよ。

 

───── お話を聞いていると、たくさん油を使いたくなってしまいますが、やはり過剰摂取には気をつけないといけないですよね?

 

荒川教授: はい、脂質はとても効率的なエネルギー源ですので、適量を楽しみましょう。

 

───── こめ油をほどよく使って、おいしく健康的な暮らしを始めます!