真白

おいしいの研究

真白

vol.16

研究者:髙橋 啓太さん

研究者:髙橋 啓太さん

ホクレン農業総合研究所 作物生産研究部 園芸作物開発課。2020年のホクレン入会から玉ねぎの品種開発に携わって3年目。大学・大学院で研究対象としてきたにんじんも担当している。趣味はスポーツ観戦で、なかでも北海道日本ハムファイターズの大ファン。

夏の主役、
プレミアムでエコな白玉ねぎ

北海道は、国内収穫量の6割以上を占める玉ねぎの一大産地です(※)。玉ねぎといえば、料理の味わいに深みを出す脇役として、多彩なレシピに欠かせない存在ですよね。でも、夏の主役として楽しんでほしい玉ねぎもあるんです。その名は「真白(ましろ)」。高品質で環境にも配慮した、北海道が誇る白玉ねぎについて、玉ねぎの品種開発に携わる髙橋さんに聞きました。
※農林水産省「作物統計調査」2020年より

辛くない+シャキシャキ=生がおいしい!

辛くない+シャキシャキ=
生がおいしい!

「おいしいの研究」で玉ねぎを取り上げるのは、実は2回目。初回は、北海道の玉ねぎ全般について取材しました。今回は、プレミアムなブランド玉ねぎとして人気を誇っている「真白」を深掘りしていきます。

「真白」は、見た目の白さが際立っていることからその名が付いたとか。髙橋さん、味わいはどのような特徴があるのですか? 「水にさらさなくても辛みが少なく、ほんのり甘みを感じる、これまでにない玉ねぎです。玉がしっかり締まっていて、水分が多いので食感もシャキシャキ。生で食べると、そのおいしさがよくわかりますよ」。

髙橋さんお気に入りの食べ方が気になります。「丸ごと煮込んだり、厚めに切ってソテーしたりしてもいいんですが、生のままスライスして、ポン酢とかつおぶしをかけていただくのが好きですね。『真白』のおいしさがストレートに感じられますから」。簡単でおいしい。それはうれしい!夏の食卓を涼しげに彩るサラダも良さそうですね。

ところで、生の玉ねぎのおいしさには甘みの度合いも関係しているんですか? 「甘みはあるに越したことはないのですが、辛みが多いと甘みがわからなくなってしまいます。つまり、甘みが多いことよりも、辛みが少ないことのほうが生で食べる場合は重要になりますね。私たちも食味試験を行うのですが、辛い品種を先に食べてしまうと、それ以降に食べるものの味がわからなくなってしまうので注意しています(笑)」。

とても繊細、だから高い技術が求められる

とても繊細、
だから高い技術が求められる

「真白」は、他の玉ねぎと作り方などに違いがありますか。「『真白』は作るのが難しく、収量性が低く、貯蔵には向いていません」。それは、生産者さんは大変そうですね。「はい。それでも、見た目が白く、きれいで、他にない味わいの玉ねぎを大事にしようと、オホーツク管内のJAきたみらいの生産者さんが栽培に挑戦し、2007年から販売を続けています」。もう15年も継続して作られているということは、消費者のみなさんの支持がそれだけ強いということですね。

作るのが難しいのは、どういう点で? 「白玉ねぎ全般にいえるのですが、表面が柔らかくて打撲に弱いため、収穫時などに繊細な取り扱いが欠かせません。また、種の発芽する力が少し弱いので、苗作りも温度管理などを丁寧に行う必要があるんです。当初から私たちホクレン農業総合研究所でも技術面のサポートをさせていただき、現在ではかなり確立されてきました」。

「真白」を育てるのは19名のエコファーマー

「真白」を育てるのは
19名のエコファーマー

作り手もかなり増えているんですか? 「当初は3名の生産者から始まったようですが、現在も19名と決して多くはないです。北海道全体の玉ねぎの生産量から考えても、『真白』は本当に極々わずかな量しか出荷されていません。限られた人数で、本当によいものを作るという考え方ですね。ちなみに19名全員が『エコファーマー』なんですよ。これは、持続可能性の高い生産方式を取り入れた農業者に対し、都道府県知事が認定しているものです」。

なるほど、北海道や地球の未来を考え、試行錯誤しながらよりよい農業を実践しているみなさんなんですね! 「はい、生育状況などを確認する畑の巡回などでお会いすると、生産者同士のコミュニケーションがすごく活発だと感じます。畑の状況についてとても友好的に意見交換をしているのが印象的で、みなさんで高めあおうとしている空気感が伝わってきました」。

よりよい白玉ねぎとの出会いを求めて研究中

よりよい白玉ねぎとの
出会いを求めて研究中

エコファーマーのみなさん、カッコいい! 「真白」はカーボン・オフセット玉ねぎでもあるようですが、これはどういう仕組みですか? 「農業機械の使用によりCO2が排出されますが、森林保全によるCO2吸収事業を支援することで、排出分を相殺(オフセット)しているんです」。このようなストーリーも含めて味わうと、いっそうおいしく感じられそうですね! 「そうですね。とくに『真白』は購入後、なるべくフレッシュなうちに召し上がっていただくのがベストです」。

最後に、農総研では現在、どのようなテーマで白玉ねぎの品種開発を行っているのでしょうか。「『真白』などおいしい白玉ねぎの食味を維持しながら、収量性が高く、作りやすい品種の開発をめざしています。そのほか生産方法などの研究でも、生産者さんの役に立つ成果を出したいです。玉ねぎは作付面積が大きいので、一つの成果が大きな効果をもたらします。それが玉ねぎを研究する醍醐味だと思って日々取り組んでいます」。