MAフィルム
輸送
Vol.02

おいしいの研究

MAフィルム輸送

vol.2

研究者:吉田 慎一さん

研究者:吉田 慎一さん

ホクレン農業総合研究所 食品検査分析センター 食品流通研究課 課長補佐。2005年のホクレン入会から10年間は水稲の研究に従事。現在は輸送技術を中心に、水稲やレッドビート、サツマイモの貯蔵・加工にも携わる。趣味は乗馬、ルアー釣り。

距離を越え、時を越え、
おいしさを多くの人に!

北海道の青果物は、全国から引く手あまた。鮮度をキープしながらコストを下げる輸送技術の開発は大きなテーマです。前編では、その新たな逸材として、MAフィルムという特殊な袋の仕組みを紹介しました。今回はブロッコリーを用いた実証試験のエピソードや、MAフィルムのさらなる可能性について、引き続き吉田さんに話を聞きます。

出荷に立ち会い、到着地へ先回りする日々

出荷に立ち会い、
到着地へ先回りする日々

日本にとっては新しいMAフィルムですが、国を跨いだ流通網があるヨーロッパや、国土が広いアメリカでは、すでに長距離輸送で当たり前に活躍しているのだとか。「日本では、産地から地場市場まで1〜3時間というケースが大半なので、輸送時の鮮度保持という観点はほとんどありません。一方、北海道から送る場合は、たとえば関東着でも2日かかるため、鮮度保持は北海道ならではの困りごとなんですよね」と吉田さん。

つまり、国内ではMAフィルムのことを誰も研究してこなかったと…。「そうなんです。先行情報がないため、自分たちで実証試験を行うしかありませんでした。MAフィルムで梱包したブロッコリーを、できるだけ実際の流通に近いかたちで全国に送るという試験です。2015年と2016年の夏から秋にかけて計8回実施しました。行き先は東京、神奈川、静岡、愛知、広島、沖縄の6都県です」

吉田さんは到着地から届くデータを分析するような感じで? 「いえいえ、私もブロッコリーに合わせて動きましたよ(笑)。まず道内の出荷地に行って輸送中の温度推移を記録するために温度計を袋の中に仕込んだり、出荷前の重さや成分を調べます。それから先回りして到着地へ向かい、届いたブロッコリーを引き取ったら、袋の中のガス濃度や臭気などを測った後、弊会の道外支店などで食味試験や成分抽出を行います。細かい成分分析は札幌に戻ってからですね。ブロッコリー以外の品目での輸送試験も同時並行していましたから、期間中の2か月ほどは移動ばかりの日々でした」

おいしさをキープできる輸送条件を解明!

おいしさをキープできる
輸送条件を解明!

それはかなり大変! その甲斐あって、なにか新しい発見があったのですね? 「はい、MAフィルムが適切に使える輸送条件を明らかにすることができました。8回の試験のうち、6回は鮮度が保持できて、残り2回はうまくいかなかったんです。その差が何かということを突きとめることで、『10℃以上の積算温度が300℃・h未満』であれば、MAフィルムでおいしく輸送できるという数字が導き出されました」

やりましたね! でもちょっと難しいので、整理させてください。1時間ごとに袋の中の平均温度を記録し、それが10℃以下であればカウントせず、10℃以上なら、たとえば15℃の場合は「5」(15℃-10℃)が加えられると。輸送に48時間かかったとすれば、この足し算を48回行って、答えが「300」以下なら、そのブロッコリーはおいしい? 「そのとおりです。それほど難しい条件ではありませんので、MAフィルムの利用促進を各方面にアピールしていきたいですね」

スイートコーンやメロンにもフィルムの力を!

スイートコーンやメロンにも
フィルムの力を!

ブロッコリー以外でもMAフィルムは活用できそうですか? 「並行して実証試験を行った青果物の1つがスイートコーンです。海外メーカー製のスイートコーン用フィルムを使うと、ガスバランスが崩れる場合があったので、メーカーにそのデータを伝え、日本の流通に合うように改良してもらいました」。開発にも携わったんですね! 「これは本当に良い出来で、温度管理を適正に行えば、現在の流通環境下でもみずみずしさや甘みをキープできます。関係者からも高評価をいただき、現場導入に向け手応えを感じています」

そのほか、現在研究中のものがあれば教えてください。「メロンですね。MAフィルムにもう1つ別の技術を組み合わせて、秋に採れたメロンを、雪まつりがある2月まで保管することに挑戦中です。MAフィルムだけでも正月前後までは十分にもちそうですが、あと少しの工夫で2月までいけるのではないかと。この時期に国内外から観光やウィンタースポーツをしにいらっしゃる皆さんに、北海道のおいしいメロンを味わってもらえたらうれしいです」。距離だけではなく、時も越えて、多くの人においしさを届けるMAフィルム。農業王国・北海道の力強い味方となりそうですね!