冷凍食品
[前編]

おいしいの研究

冷凍食品

vol.6

研究者:石田 文さん

研究者:石田 文さん

ホクレン農業総合研究所 食品検査分析センター 食品流通研究課 主査。ホクレン入会から最初の8年間は東京支店で営業や販売企画を担当。その後本所の管理本部 販売推進部を経て、2019年2月から現職。趣味はカレー店めぐり。

道産野菜を年中手軽に
味わってもらうために!

これまで農産物の品種開発や貯蔵、輸送に関する研究を紹介してきた本シリーズ。今回は初めて「加工」のジャンルに切り込んでいきますよ! ホクレン農業総合研究所が手がけている加工食品の大きな柱といえば「冷凍食品」。その商品開発の裏側について、食品流通研究課の石田さんに話を聞きました。

素材のおいしさ、そのまま冷凍!

素材のおいしさ、
そのまま冷凍!

スーパーに陳列されている冷凍食品は本当にバラエティ豊かで、いつも目移りしてしまいます。しかも増えているのでは? 「そうですね。加工技術の進歩でいっそうおいしくなり、添加物なしで長期保存できる便利な食材として需要が高まっています。その背景には、調理時間を短くしたい共働き・単身世帯が増えているなどの要因があると考えられています」と石田さん。

ホクレンブランドの冷凍食品は、私たちが買える市販用と、飲食店などが使う業務用があるそうですが、どちらにも共通した商品構成の特徴を教えてください。「玉ねぎ、かぼちゃ、コーンなど、北海道の代表的な野菜を、素材のまま冷凍した商品が中心となっていますね」。つまり、電子レンジでチンするだけの調理済みタイプよりも、調理の材料として使ってもらえるものがメインということですね? 「そのとおりです。なかでも品数が多いのは、じゃがいもを使った商品ですね」

食べるのも立派なお仕事「官能評価」

食べるのも立派なお仕事
「官能評価」

リストを見ると、フレンチフライポテトに皮付きフライポテト、ナチュラルカットポテト、ホールポテト、粉ふきポテト、マッシュポテトなど、本当にたくさん! 「というわけで、私たちは毎日のようにじゃがいもを食べています(笑)。官能評価といって、たとえばフライポテトであれば、実際に揚げたものを食べて、品種ごとに食感や食味、カッペンの程度といった加工適性を評価しているんです」

カ、カッペン…それは何語ですか?「褐変と書きます(笑)。褐色に変化する度合いのことで、フライの場合は表面の焦げやすさですね。糖含量が高いと褐変しやすいんですよ」。なるほど、甘すぎるのもよくないと。逆にどのような品種がフライに適しているんですか? 「ホクホクした食感で、じゃがいもらしい風味があって、褐変しにくい適度な甘みがあるものですね。さらに黄色が強めだとおいしそうに見えますし、大ぶりで長細い形だと立派にカットできます」

フライに向いている道産じゃがいもは?

フライに向いている
道産じゃがいもは?

たしかに味わいだけではなく、見た目も大切な要素ですよね。いま教えていただいたポイントをすべて満たしているような、フライにベストな道産じゃがいもというのは存在するんですか? 「トータルで評価が高いのは、ホッカイコガネという品種です。とてもおいしいですよ。ホクレンでもずっとメインで使ってきたのですが…」と、石田さんがちょっと切ない表情に。

ど、どうしたんですか? 「今後はジャガイモシストセンチュウに抵抗できる品種を増やしていくという方針があるため、ホッカイコガネなど抵抗性の弱い品種は生産量が少なくなることが予想されているんですよ。そのため、なんとかホッカイコガネに匹敵する品種を探そうということもあって、仕事でじゃがいもを食べる機会が本当に多いんです。今日も食べることが決まっていたので、お弁当は持ってきませんでした。栄養バランスは、ミックスベジタブルなどで補っています(笑)」

ということで後編では、現在、石田さんたちが力を入れているという進化系ミックスベジタブルを軸に、冷凍食品の開発についてさらに掘り下げていきます!