かぼちゃ
「りょうおもい」

[前編]

おいしいの研究

かぼちゃ「りょうおもい」

vol.9

研究者:内藤 洋太さん

研究者:内藤 洋太さん

ホクレン農業総合研究所 作物生産研究部 園芸作物開発課 主査。2009年の入会以来、残留農薬などに関する検査を担当し、2016年からは長沼研究農場で、かぼちゃの品種選定試験や普及推進、栽培支援などに従事。趣味はお子さんと遊ぶこと。

北海道発、
冬においしいホクホクかぼちゃ!

全国の作付面積の半分近くを占める北海道のかぼちゃ。色も形も味も、バラエティ豊かな品種が栽培されています。そのなかから今回は、これからの寒い季節においしく味わえる、ホクレンオリジナル商品の『りょうおもい』をピックアップ。かぼちゃの品種開発などに携わる内藤さんにお話を聞きました。
※この取材は9月上旬に行いました。

冬にかぼちゃがおいしいのは当たり前?

冬にかぼちゃがおいしいのは
当たり前?

かぼちゃといえば、日本には冬至(今年は12月21日)にいただく風習がありますよね。栄養満点のかぼちゃで寒さに負けない体づくりをしようという知恵だと思います。「はい、そんな私たちの『冬においしいかぼちゃを食べたい』という思いと、農家さんの『冬においしいかぼちゃを届けたい』という思いをつなげるかぼちゃということで、『りょうおもい』と名付けられました」と内藤さん。

ここでちょっとギモンが…。昔から「冬至といえばかぼちゃ」で、冬には普通にかぼちゃが出回っているのに、比較的最近デビューした『りょうおもい』を、冬向けとしてアピールしているのはどうして? 「これまで冬に食べられていたかぼちゃは、他府県産や輸入物が多く、北海道産は11月で出荷がほぼ終わっていたんです」。なるほど、冬に北海道のおいしいかぼちゃを、ということで生まれたのが『りょうおもい』なんですね!

でも、どうやって12月の北海道で収穫を? 「いえいえ、収穫は12月ではありません。北海道のかぼちゃの収穫期は、どの品種も8~9月で、そこから食べごろを迎えるまで寝かせて、出荷されるんですよ」。…ということは、『りょうおもい』は、より長く寝かせることができると。「そうです。長く貯蔵してもベチャベチャした食感になりづらいという特徴があるんです」。

蒸しかぼちゃで、食味の変化をチェック

蒸しかぼちゃで、
食味の変化をチェック

貯蔵されているかぼちゃの中では、いったい何が起こっているのでしょう。「私たちはデンプンと糖の含有量を調べていますが、どのかぼちゃも日数の経過とともにデンプンが減っていき、それに置き換わるかたちで糖が増えていきます。デンプンは粉質感、つまりホクホク感にかかわる成分で、多すぎるとパサパサしますし、少なすぎるとベチャベチャな食感になるんですよ」。

ちなみに目の前に、一口サイズのおいしそうなかぼちゃがあるのですが…。「去年ここで収穫した『りょうおもい』を、ちょうど食べごろの12月に蒸して、冷凍保存しておいたものです。どうぞお召し上がりください」。ありがとうございます! んー、ホクホクしていて、とても甘くて、おいしいですねー。

「それはよかったです。私たちも、このように蒸したかぼちゃで食味試験をしています。粉質感と甘さに加え、酸味、エグ味、色合いなどを、毎回同じメンバーで同じ時間に食べて評価しているんですよ。今年は27種類を試験する予定です。時とともに食味が変わっていくため、10月から12月まで1か月おきに3回行います」。1日で27種類を食べる?「いえいえ、それはさすがに無理です(笑)。10個ぐらいまでじゃないと味の判断もつかなくなるので、それぞれ3日に分けて実施します」。

目指すはデンプンと糖のゴールデンバランス!

目指すはデンプンと糖の
ゴールデンバランス!

かぼちゃの中のデンプンや糖の含有量を測定したり、食味試験を行ったりしながら、貯蔵中に変化していくかぼちゃのおいしさについて確認されてるということですが、具体的にはどういう状態になるとベストなのでしょう。「もちろん、人それぞれの好みもあるのですが、私たちの成分分析の結果から見ると、『りょうおもい』について言えばデンプンと糖の量が同じぐらいになったときがおいしさのピークだと考えています」。

『りょうおもい』は、そのピークが来るタイミングが他の品種よりも遅く、ちょうど冬至のころにホクホクした食感と甘さが最高のバランスになるわけですね。ちなみに『りょうおもい』には眼の健康などを維持する「ルテイン」も豊富に含まれており、今年度、機能性表示食品の申請が受理されたそうです。おいしく食べて、ビタミンやミネラルなどの栄養分をしっかり補給し、厳しい冬を乗り越えましょう!

後編では、現在ちょうど眠りについている『りょうおもい』の貯蔵方法や、かぼちゃの品種開発のトレンドなどについて深堀りしていきます!