三元交配牛
Vol.01

おいしいの研究

三元交配牛

vol.1

研究者:篠原 禎忠さん

研究者:篠原 禎忠さん

ホクレン訓子府実証農場長。1993年にホクレンに入会し、留萌、札幌、帯広などの道内各地で主に飼料関連の仕事に従事。訓子府実証農場には3度目の赴任となり現在4年目。趣味はオンラインで世界中の動植物マニアと情報交換をすること。

この先もずっと
酪農王国であり続けるために!

全国トップの生乳生産量を誇る酪農王国・北海道! しかし、生産者の数は減少傾向が続いているのだとか。このような状況で求められているのは、作業の省力化や生産性の向上です。その1つの解決策として、訓子府実証農場が挑戦している「クロスブリーディング(異種交配)」について、場長の篠原さんに話を聞きました。

北海道農業の新たなかたちを「実証」する場

北海道農業の
新たなかたちを「実証」する場

飼料畑や放牧地など、約250ヘクタールという広大な敷地を持つホクレンの訓子府実証農場。1963年、北見市に隣接する訓子府町に誕生した歴史ある農場です。

篠原さん、この農場はどのような役割を担っているんですか?

「ひとことで言えば営農支援です。農家さんや農協さんのさまざまな困りごとを解決できるような技術提案や情報提供をするために、実際の畑や牛を活用して実証するのが私たちの仕事です」。なるほど、それで名称に「実証」という言葉が入っているんですね。

具体的にはどのような取り組みを?

「畑作だと今はスマート農業に力を入れています。たとえばGPSとトラクターを連動させて自動操舵を実現することで、不慣れな人でも速く正確に作業ができます。また、人工衛星から畑を撮影して各所の光合成の量を推定するリモートセンシングも研究中です。これによって、各所に適切な量の肥料を施すことができると、肥料は少なくて済み、収量は伸びて、品質のばらつきを減らすこともできます」。

すごい、いいことだらけですね!

ICTや遺伝子解析を活用し酪農を未来へつなぐ

ICTや遺伝子解析を活用し
酪農を未来へつなぐ

一方で酪農に関しては、どのような研究を進めているのでしょう。

「近年は酪農家1軒あたりの牛の数が増えていますが、そんななかでも1頭1頭をしっかり世話することが大切です。そこでICTを活用し、牛から得られるさまざまなデータを見える化して、適切な対応が取りやすい環境づくりに取り組んでいます。たとえば首輪に3次元センサーを取り付け、牛の動きを見える化することで、活発に動いていたら発情のサイン、動きが少なければ病気の可能性ありといったことを確認できます」。

牛が病気にかかることは、けっこう多いのでしょうか。

「北海道の乳牛は99%がホルスタインですが、乳量を上げるための改良が進められてきたため、病気への強さなどはあまり考慮されてこなかったんです。そのため今のホルスタインは必ずしも病気には強くないんですね。また繁殖成績も低迷しており、これらは世界的な問題となっています。そこで現在は遺伝子解析によって長命性や耐病性、繁殖能力が高くなるような改良が進められるようになってきました」。

2020年、日本初の三元交配牛が誕生!

2020年、
日本初の三元交配牛が誕生!

改良といえば、今回メインで取り上げたい「クロスブリーディング」も、改良の一手法ですよね。その原理について教えてください。

「これは異なる品種を交配する改良技術で、ヘテローシス効果という遺伝現象を利用するものです。ヘテローシス効果は雑種強勢とも言われますが、つまり異なる品種を交配すると、有用な遺伝子が発現し、両親の平均的な能力よりも優れた性質をもった子どもが生まれるという現象です。三元豚はご存じですよね?」。

はい、スーパーのお肉コーナーでよく見かけます。あれもクロスブリーディングということですか?

「ええ、3つの異なる品種を交配した豚ということです」。

なるほど、「三元」とはそういう意味だったんですね。

「クロスブリーディングは豚に限らず、鶏でもよく行われる改良技術です。10年ほど前から欧米で牛に活用されはじめ、さまざまな文献を読み漁りながら、いつか挑戦したいと思っていたんですが…」。

何かハードルがあったんですか?

「当時はBSEの関係で精液を輸入することが難しかったんです。2017年についにフランスからモンベリアードという品種の精液が届き、ホルスタインに最初の種付けを行いました。そうして生まれた子をF1と呼びますが、次はF1にカナディアン・エアシャーという品種を交配し、2020年4月に誕生したのが日本初の三元交配牛(下写真)ということになります」。

というわけで後編では、訓子府実証農場のクロスブリーディングについて、さらに深堀りしていきます!