三元交配牛
Vol.02

おいしいの研究

三元交配牛

vol.2

研究者:篠原 禎忠さん

研究者:篠原 禎忠さん

ホクレン訓子府実証農場長。1993年にホクレンに入会し、留萌、札幌、帯広などの道内各地で主に飼料関連の仕事に従事。訓子府実証農場には3度目の赴任となり現在4年目。趣味はオンラインで世界中の動植物マニアと情報交換をすること。
※役職は、取材当時(2020年12月)のものです。

三元交配牛とともに
北海道の酪農の未来へ!

北海道で飼育されている乳牛の99%は、乳量の豊富なホルスタイン。しかし長命性や耐病性、繁殖能力の面では、より優れた品種も存在します。そこで訓子府実証農場では、ホルスタインのウィークポイントをカバーすることを目的とした「クロスブリーディング(異種交配)」に日本で初めて取り組んでいます。前編から引き続き、篠原さんに話を聞きました。

3品種を掛け合わせた、その次はどうする?

3品種を掛け合わせた、
その次はどうする?

まず前編のおさらいをしておきましょう。クロスブリーディングとは、異なる品種を交配した際に発現するヘテローシス効果(雑種強勢)によって、両親より優れた性質をもった子を生み出す技術でしたね。そして、訓子府実証農場のクロスブリーディングでは、まずホルスタインにフランスのモンベリアードを交配。そうして生まれた牛(F1と呼ばれる)に3番目の品種としてカナディアンエアシャーを掛け合わせ、2020年3月に日本初の三元交配牛が誕生したということでした。

ここでちょっと疑問が。この三元交配の子が大きくなったら、次はどの品種と交配するのでしょう? 「またホルスタインに戻ります。3品種をローテーションさせることで、ヘテローシス効果を何世代にもわたって持続させていくという考え方ですね。ちなみに、F1にホルスタインを掛け合わせる二元交配だと、ヘテローシス効果が維持できず、クロスブリーディングのメリットが出てこないんです」。

日本初の三元交配牛は、世界初の掛け合わせ

日本初の三元交配牛は、
世界初の掛け合わせ

ところで、ホルスタインに掛け合わせる品種として、なぜモンベリアードとカナディアンエアシャーが選ばれたんですか? 「乳牛のクロスブリーディングは欧米での研究が先行していて、ホルスタインと遺伝的に離れた品種を探しては、さまざまな組み合わせが検討されてきました。その結果、ホルスタイン、フランスのモンベリアード、デンマークのバイキングレッドを三元交配することで繁殖成績がよくなり、疾病も減ることが実証されたんです」。

なるほど!…って、待ってください。訓子府実証農場が選んだ3番目の品種はバイキングレッドではなく、カナディアンエアシャーですよね? 「そうですね。デンマークと日本の間では、家畜に関する衛生基準が課題で、バイキングレッドを輸入することができません。そこで過去にバイキングレッドを交配しているカナディアンエアシャーをカナダから輸入して使うことにしたんです」。ということは、これは世界初の掛け合わせ!? 「はい、どのように育ってくれるのか楽しみですね」。

飼育していて感じる、ホルスタインと異なる点はありますか? 「まず顔が違います(笑)。ホルスタインの顔は白黒がほとんどですよね。F1はモンベリアードと同じように顔全体が白いんですよ。さらに三元交配牛はいろんな模様が出てくるので、外見だけでは何を組み合わせたのかわからないでしょうね。それと、ホルスタインはボーッとしていて、人間が来ても気にしないんですが、クロスブリーディングの牛たちとはよく目が合います(笑)。人懐っこくて賢いイメージですね」。

わが子のように牛と向き合うことが大切

わが子のように
牛と向き合うことが大切

クロスブリーディングの目的のひとつである耐病性についてはいかがでしょう。「ホルスタインは適切に管理しないと疾病や繁殖成績低下により、優れた能力を発揮できません。そこで、クロスブリーディングによる繁殖改善や疾病低減の効果が期待されています」。それはすばらしいですね。逆にホルスタインよりも劣る点はあるのでしょうか。「欧米の研究によれば、乳量はホルスタインに比べて少なくなるようです。ただ、長生きする分、平均産次数が多くなり、生涯乳量ではホルスタインを上回るというデータも出ていますので、そこには期待したいですね」。

将来的に三元交配牛が期待どおりの活躍をしてくれた場合、ホルスタインの立場が気になったりもしますが…。「三元交配牛はあくまで、北海道の酪農に多様性を付加するための選択肢のひとつであって、ホルスタインをすべて置き換えようということではありません。ホルスタインも乳量中心の改良から、疾病や繁殖を考慮した長命性に重きを置いた改良に移行してきています」。多様性を向上させて、北海道の酪農のサステナビリティを高め、未来につないでいくということですね。

最後になりますが、篠原さんにとって、農場の牛たちはどのような存在なのでしょうか。「生まれる瞬間から見ているので、やっぱりかわいいですし、わが子の成長を見守るような感覚がありますね。クロスブリーディングなどの技術も大切ですが、酪農に携わる一人一人が、一頭一頭の牛を健康に育てる努力をすることが何より大切だと思っています」。丁寧に育てられた牛たちの恵みをおいしくいただいて、健康的な毎日を過ごしたいと思います!