「スターチス・シヌアータ」
[後編]

おいしいの研究

スターチス・シヌアータ

vol.13

研究者:三上 翔平さん

研究者:三上 翔平さん

ホクレン農業総合研究所 作物生産研究部 園芸作物開発課。2018年のホクレン入会から花きをはじめ、カラーピーマンやトマトなど、ハウス内で育てる施設園芸作物の各種試験に従事。趣味は自作のおつまみとともに楽しむ晩酌。

美しさを生み出す、
生産者と研究者の連携

北海道は国内におけるスターチス・シヌアータの一大生産地。前編では、その花としての特徴や、生産者が求める品種の傾向などを三上さんに聞きました。そして後編では、各品種の評価方法や、生産者に求められる特徴などに迫ります。

多品種の特性を調べ、生産者に情報提供

多品種の特性を調べ、
生産者に情報提供

前編最後に、切花長(きりばなちょう)や分枝数(ぶんしすう)という言葉が出てきましたが、これらの数字は品種開発の過程で調査するということですね? 「もちろんそれもありますし、一方で新たに登録されたさまざまな品種について調査し、生産者さんへの情報提供も行っています。これを品種比較試験と呼んでいます」

その試験は、どのように進めるのですか? 「各メーカーさんに試験用として新しい品種の提供を依頼し、送られてきたものを同時期に栽培します。今年は10品種ほど植えました。成長したら各項目を調査し、成績書を作成して生産者さんに配布する流れですね」。切花長や分枝数のほかにどのような項目があるのでしょう。「採花始(さいかはじめ:成長して採花を始められるようになった日)、ブラシの数や長さ・幅、灰色かび病の有無など、12項目の特性を調査します」

早生と晩生、それぞれの良さがある

早生と晩生、
それぞれの良さがある

採花始を記録するということは、できるだけ早く成長するのが理想ということですか? 「植えてから最初に立ち上がる1番花を早く採花できて、次の2番花も早く育つ品種を早生(わせ)、逆に成長が遅いものを晩生(おくて)と呼びます。早生のほうが出荷の回転がよくなりますが、晩生は高規格の花が出やすいため、どちらがいいというよりも、生産者さんのニーズに合った品種が求められるわけです」

そしてもちろん、ブラシの数やサイズもしっかり測ると。「そうですね、ただブラシについては、形状よりも、色のほうが重視される傾向があります。ですから、萼を変色させてしまう灰色かび病は生産者さんにとって大敵です」。それで灰色かび病も試験項目に含まれているわけですね。「はい、この病気にかかると、ピンク色の萼であれば青紫っぽくなってしまい、商品価値が落ちてしまうんです」

熱望されているピンク色の新品種

熱望されている
ピンク色の新品種

品種比較試験の結果などをもとに、生産者のみなさんへの栽培指導も行っているそうですね。「はい、生産者さんの圃場を回って、栽培状況を確認したり、病気が出ていたらアドバイスをしたり。また、講習会やオンラインでの情報提供も行っています。もちろん、生産者のみなさんはこだわりをもって栽培されている方ばかりですので、こちらが教えていただくことも多いです。情報交換をさせていただくのがとても楽しいですね」

そのような機会に生産者さんからよく聞かれる質問などは? 「ニーズとしてよく聞くのは、ピンク色の品種にはいいものが少ないから開発してほしいということです」。つくるしかないですね! 「個人的にその思いは強いです。ただ、ピンクの品種は病気に弱いなど、本当にすごく難しいんです。いつの日か、挑戦できたらうれしいですね」

そのときが来ることを陰ながら楽しみにしています! さて最後に、昨今のスターチスのトレンドについて教えてください。「仏花としての需要が大きいのは変わりませんが、最近はアレンジメントやドライフラワーに使われる機会も増えています。ドライフラワーにはとても向いている花で、簡単につくることができ、しかも長持ちしますよ」。花屋さんで見かけたら、インテリアを彩るアイテムとして購入してみてはいかがでしょう。