マネジメントのチーズ
~チーズ工房 NEEDS~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

マネジメントのチーズ
~チーズ工房 NEEDS~

十勝川、札内(さつない)川などが町内を流れる様子から、アイヌ語の「山際を流れる川」を意味する「マクウンペツ」が転訛し、その名が付いた幕別町。120年以上続く老舗牧場が前身の「NEEDS」は、「共働学舎新得農場」の姉妹工房として多くの職人を輩出し、今では十勝を代表するチーズ工房のひとつである。

NEEDSでは、ひとりの職人が突出することなく、いつ、だれが作っても、高品質なものをかわらず作り出すことに重きを置いている。コンセプトは『いつものテーブルにチーズを』。一部の人に好まれる個性が強いチーズよりも、多くの人に愛され、また食卓にのせようと思ってもらえる食べやすいチーズを目指している、と工場長の磯部公児さんは教えてくれた。食品関係の前職でのマネジメント力を評価され、工場長として招かれた磯部さん。「資金は出すけど、口は出さないようにしている」と笑うが、製造の肝心かなめの部分を適切に見守り、どのように販売していくか、お客さんに伝えていくかを考え、自分たちのチーズの全体のかじ取りに真剣だ。
先月(2022年1月)、十勝は24時間で70cmも積もる大雪に見舞われた。そのときも、磯部さんは職人たちが存分に働けるよう、深夜から工房周りを除雪していたそうだ。見えないところで、しっかりと工房を支えている。

その工場長の適切な管理のもとで、5人の職人は存分に腕を磨き、工房のチーズは、高位平準化を維持している。「最近、NEEDSさんのチーズ、おいしくなったよね」という話を、ほかのチーズの作り手からもよく聞くようになった。昨年、スペインで開催された「World Cheese Awards2021」では、NEEDSのラクレットが金賞を見事獲得。「良いことはみんなのおかげ、悪いことは自分の責任」。この受賞は、磯部さんのマネジメントの結実だと確信する。
チーズづくりとは離れるが、前述の大雪のとき、磯部さんが職人たちに「この大雪の中、遅れずによく5時半に来られたね」と声をかけると、「普段は30分ぐらいで来られるところを、2時間もかかりましたよ〜」と涼しい顔をして答えたそうだ。危機予知による意識が浸透している証拠だ。

チーズの紹介:大地のほっぺ
一見カマンベールのようだが、白カビと酵母を両用する独自製法により、あっさりした味わいとお餅のような食感を実現。「いつものテーブルに」を目指すNEEDSの創意工夫が結集された代表作。
 
< チーズ工房NEEDS >
〒089-0788 北海道中川郡幕別町字新和162-111
https://needs-kashiyuni.com