Vol.39
再出発のチーズ
~ナチュラルチーズ工房 ジャパチーズ~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

再出発のチーズ
~ナチュラルチーズ工房 ジャパチーズ~

市内を流れる忠別川(ちゅうべつがわ)をアイヌが「チュクペッ」と呼んでいると和人が聞き取り、それを「チュプペッ cup-pet :太陽-川、(転じて)日が昇る川」と解釈して名づけられたという、北海道第二の都市、旭川。
そのメイン通り「平和通買物公園」に2015年にできたチーズ工房が、「ナチュラルチーズ工房 ジャパチーズ」だ。

店主の長尾英次さんは、宮城県の酪農一家の生まれ。将来は農業生産に関わりたいと酪農学園大学で食品加工を学び、アメリカの牧場で研修。帰国後は、全国的に知られる「蔵王酪農センター」で、18年間チーズ製造を担ってきた。
転機となったのは、2011年3月11日。そう、東日本大震災だ。東京電力福島第一原子力発電所の事故が起き、被災地の食や暮らしそのものの「安心」も「安全」も激しく揺らいだ。長尾さんは、奥さんを実家のある旭川に避難させ、苦悩の日々を過ごした。チーズ製造から身を引こうとした長尾さんを引き留めたのは、周囲の技術者や取引先の人々。「怒られたんです。お前には使命がある、その技術を活かすべきだと」。

その後、長尾さん自身も旭川に移住。一念発起し、店を構えたのは、繁華街の小さな一角。「まちの豆腐屋のように、人が立ち寄ってくれる場所にしたい」という思いで立ち上げた、小さな居城。インバウンドではなく、地元の人に楽しんでもらいたい。その思いの中、食べやすいチェダーとモッツァレラを中心にチーズをつくる。
一度は切れそうになった、チーズづくりの思いと情熱は、場所をかえて、小さくしっかりと炎をともし続けている。

チーズの紹介:
黒岳チェダー
ナチュラルチーズ工房 ジャパチーズの看板ともいえるチェダーは、コク深く、あと引く味わい。その中でも「黒岳チェダー」は、旭川市にあるクラフトビール「大雪地ビール」 の黒ビール「黒岳」を混ぜ込んで熟成させたチーズだ。断面が大理石模様で、黒ビールのほろ苦さが少し伝わり、ビールがすすむ。
 
< ナチュラルチーズ工房 ジャパチーズ >
〒070-0037 北海道旭川市7条通7丁目33-69
https://japacheese.com/