青春のチーズ
~十勝野フロマージュ~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

青春のチーズ
~十勝野フロマージュ(中札内村)~

「乾いた川」を意味する「サチナイ」から名づけられた「札内(さつない)川」は、日本を代表する清流の一つ。その中流に位置する村という意味で付けられた「中札内村」。
十勝野フロマージュが生まれたきっかけは、十勝管内の乳業会社で、練乳やバターなどの製造に従事していた赤部紀夫さん(先代社長。現会長)が、社内でその町の特産品を生み出そうと企画されたプロジェクトに参画し、カマンベールチーズづくりと出会ったことだった。試行錯誤を重ね、チーズづくりに魅入られていく中で、定年退職が迫り、チーズ工房を立ち上げることを決意。その場所を探しているときに、立ち寄った中札内村で飲んだ水の美味しさに驚き、「この水があるこの場所で、美味しいチーズをつくりたい」と、中札内村で工房を始めることを決めた。

十勝野フロマージュといえば、白カビチーズと誰もが思う。紀夫さんはフランス・ノルマンディーに何度も足を運び、製法のみならず、「その土地らしさ」とはなにかを模索してきた。単に真似事ではなく、日本人の口にあうチーズとは、また十勝の食材にあわせやすいチーズとはなにかということを常に頭に入れてきた。「田楽味噌漬けカマンベール」などは、十勝らしさを念頭に置いた商品の最たる例だろう。
現在は、会社の経営を長男の順哉さんに譲り、また製造の中心は三男の貴紀さんが担う。しかしながら、工房に伺うと、紀夫さんはいつも製造時に着用する白衣でいる。週のほとんどを、いまだ工房に入り、製造に携わっているのだ。紀夫さんが、貴紀さんとともに工房を立ち上げたのが、59歳のときのこと。現在79歳。また、順哉さんは、現在も地元のオーケストラで演奏を続けているが、十勝管内の中学校で音楽を教えていた。

人生、どこからでも挑戦を始められる。
紀夫さんの優しくも、また新しいことに挑戦しようという強い眼差しをみるたび、サムエル・ウルマンのこの詩を思い出す。
「青春とは、人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう。また、臆病さを退ける勇気。やすきにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。年を重ねただけでは人は老いない。理想を失うとき、はじめて老いる。頭を高く上げ希望の波をとらえるかぎり、80歳であろうと人は青春の中にいる。」十勝野フロマージュの青春は、続いていく。