しあわせを運ぶチーズ
~しあわせチーズ工房~

白い滴のマリアージュ

今回のテーマ

しあわせを運ぶチーズ
~しあわせチーズ工房~

北海道・十勝の東北部にある足寄町。「キト・ウシ(ギョウジャニンニクが生える場所)」に、「小さな、静かな」という意である「モ」がついた「茂喜登牛(もきとうし)」という地域に、しあわせチーズ工房はある。2020年の国産チーズのコンクールで日本一に輝いた工房だ。

高校生の時、岡山でチーズをつくる酪農家をテレビで目にし、その豊かな暮らし、ライフスタイルの魅力に惹かれ、酪農とチーズへの道に進むことになった長野県出身の本間幸雄君。
自分の思い描くチーズ、理想とする原料乳を生み出す酪農家、熟成型チーズを醸し出す風土を人と人の出会いを重ねながら探し続けた本間君は、吉川友二さんが営む「ありがとう牧場」がある足寄町茂喜登牛に、工房を設けることとなった。

本間君の目指しているチーズは、フランスのコンテ、スイスのグリュイエールといったような大型の熟成型チーズ。特に、放牧牛の乳が醸し出す地域・風土を象徴した美味しさを出したいと思い、自分が納得いく生乳を探し回った。
牧場を訪ね、乳を飲み、生乳をいただきチーズを試作してみた。そして行き着いたのが、吉川友二さんの「ありがとう牧場」の生乳であり、その根底にある吉川さんの酪農に対する姿勢であった。

足寄町の主要国道から、茂喜登牛に向かう道に入り、曲がりくねった山道を登りきったところで突然視界が開け、遠くまで見える山と谷のコントラストが目に入ったとき、誰しもが感動のこえを漏らす。ここが日本であることを忘れてしまう。

「生乳をいただき、「これだ!」って思いましたし、なにより、牛も、吉川さん家族も、みんな笑顔で、しあわせに暮らしている。その空気に惹きこまれました」

導かれるように行き着いた運命の場所。足寄町茂喜登牛。
牛も、草も、土も、人も、しあわせだと言い切るこの場所から生まれるチーズは、それを食した人を間違いなく、しあわせにしてくれる。