好奇心と探求心の結晶のチーズ
~吉田チーズ工房~
北海道第2の都市、旭川。その住宅街の中に、最近誕生した小さなチーズ工房がある。
吉田良作さんは、旭川市役所を定年後の再任用期間も含めて勤め上げた。在職時から、趣味は食べ物づくりで、うどん、そば、ベーコンなどの食肉加工まで多岐にわたる。
チーズ作りに興味を持ち、その魅力に引きずり込まれると、本場フランスまでも視察に行った。 フランスの白カビチーズを食べ、「もっと日本人の好みに合う白カビチーズがあったらいいのに」と、独学で研鑽を重ね、4年の歳月をかけて、2019年についに工房を立ち上げた。「工房」といっても、壮大な施設ではない。自宅に隣接した場所に、改造した海上コンテナを設置した小さな工房は、チーズ工房だといわなければ、だれにも気づかれないだろう。
工房の中に入ると、道具類は既製品ではなく、ご自身が工作してつくったものばかりで、まるで発明家の実験室のよう。「あれも、これも、全部ホームセンターにある材料から作ったんです」。ひとつひとつの道具を説明する吉田さんの目が一層キラキラする。使いやすいようにと工夫をこらし、試行錯誤を繰り返した、いわば「作品」。
それでも、道具や設備はもとより、チーズづくりも、「まだまだ失敗の繰り返し」という吉田さんの表情には、面白くてしょうがないという、挑戦する少年のような輝きがある。
「製造のこの時点の温度を、こう変えてみたら、とってもうまくいったので、きっとそこがポイントなんだと思うんですよ」。
チーズづくりって面白いなぁ!という好奇心。そして、もっとおいしいチーズをつくりたいという探求心。
工房前のテーブルで、チーズを食べながら、チーズのことを語る吉田さんの話は、いつまでも尽きなかった。
チーズの紹介:生かまんべーる
吉田さんがつくるチーズは1種類。「誰でも気軽に食べられる」を目指してつくった白カビチーズは、つくってから日が浅いときは、おとなしい味。賞味期限に近づくにつれ、中がとろっとなり、味わいが深まる。それはまるで仲良くなるととても饒舌にお話をされる吉田さんの人柄のようで、思わず笑みがこぼれる。