北海道とつくるおいしさ[13]
札幌酒精
工業(株)

はるばる来たぜ、食卓へはるばる来たぜ、食卓へ

北海道とつくるおいしさ13

今年で創業90周年を迎える札幌酒精工業(株)。甲類焼酎メーカーとしてスタートし、「サッポロソフト」をはじめ、北海道産原料で仕込む乙類焼酎「喜多里(きたさと)」シリーズなど、北海道ではおなじみの商品を多数ラインナップ。創業時から「酒造りで北海道の農業に貢献したい」という思いを貫きながら、ファン層を広げようと、商品開発にも力を入れています。同社がこれまで大切にしてきた北海道の農畜産物へのこだわりと、新たな挑戦について聞きました。

北海道農業への貢献を目指し創業

札幌酒精工業(株)は、1933年、消費量が増大していた焼酎の供給不足を解消しようと、道内の清酒メーカーが集まって設立した札幌焼酎(株)がルーツです。当時、馬鈴しょが生産過剰だったこともあり、創業者たちには、「北海道産の作物を原料として活用し、北海道の農業に貢献したい」という思いが。創業時は、道産馬鈴しょやでん粉を使った甲類焼酎の製造からスタートしました。1959年には、国産原料を使用した「サッポロソフト」を発売。全国的に乙類焼酎(※)がブームになった1970年代後半には、「今こそ道産原料を生かすとき」と、焼酎乙類製造免許を取得。「本格焼酎」とも呼ばれる乙類焼酎の製造に乗り出しました。
 
(※)繰り返し蒸溜を行う「甲類焼酎」に対し、「乙類焼酎」の蒸溜は一度だけ。「乙類焼酎」は、穀類や芋類などの主原料に麹と水だけを加えて造るため、原料由来の味わいや香りを感じられる。

「一村一品運動」で、生産者と縁

1978年、同社は北海道産の米、麦、とうもろこしを原料に本格焼酎造りを始めました。「北海道で生まれた当社は、創業時から北海道農業への貢献を目標にしてきましたから、原料は道産にこだわりたいところ。しかし、焼酎に適した品種を確保するのは簡単ではなかったようです」と、製造部理事部長の岩崎弘芳さん(写真右)。やむなく、輸入や道外産の原料に頼りながら、技術を磨いていたところ、全国各地で「一村一品運動」が活発化。道内でも地元の特産品で焼酎を造ろうと動き出した自治体から、次々に製造依頼が入るようになったそうです。「これがきっかけで、道内の原料産地とのつながりができました。原料の確保が大きく前進し、創業時からの思いが少しずつ形になろうとし始めたようです」と、業務部係長の友兼直也さん(写真左)は目を細めます。

本格焼酎ブランド「喜多里」の誕生

1990年代後半、全国的な芋焼酎ブームが到来。そこで同社は、北海道産のさつまいもを使ってニーズに応えようと奮い立ち、さつまいも作りから取組みました。そして2004年、焼酎に適した道産のさつまいも「黄金千貫」を使った本格焼酎「喜多里(きたさと)」を発売します。「この名前には、農畜産物に恵まれた大地を讃える『喜び多きふる里は、北海道にあり』という思いが込められています」と岩崎さん。2006年には、産地の近くでより良質な焼酎を造ろうと、厚沢部(あっさぶ)町に新工場を建設。現在、「喜多里」は、さつまいものほか、メークイン、真昆布、二条大麦を使った4種類となり、北海道生まれの本格焼酎シリーズとして人気を博しています。「お好みの量の炭酸水で割るソーダ割りも爽快感がありオススメです」と、友兼さんはお気に入りの飲み方を教えてくれました。

北海道のお酒を、もっと身近に

同社では、本格焼酎シリーズ「喜多里」に加え、2008年からはおとべワイナリーを引継ぎ、乙部(おとべ)町内でぶどう栽培から手がけて、ワインも醸造しています。また昨年は新ブランド「北海道めんこい動物誌」を立ち上げ、現在3種類をリリース。「北海道産原料へのこだわりはそのままに、味やボトルのデザインから女性や若い世代が手に取りやすいお酒を企画しました」と友兼さん。ラベルには北海道に生息するめんこい(かわいい)動物たちのイラストが描かれています。第1弾「本格梅酒 洞爺の梅」はシマエナガ、第2弾の「北海道のミルク酒 トペ」は乳牛ホルスタインの赤ちゃん、そして第3弾の「北海道のワインと梅酒」はエゾモモンガがラベルを飾り、北海道らしいお土産としても好評です。

ホエーを使ったミルク酒「トペ」

「北海道めんこい動物誌」の中でも、「北海道のミルク酒 トペ」は、北海道の酪農を応援しようと、ホエー(※)パウダーを使って造られたお酒です。「ミルク感をしっかり出すために、麦焼酎に十勝産ホエーパウダーを加えて蒸溜し、バニラで香り付けして仕上げました」と、岩崎さん。ミルク酒と聞くと、乳白色のお酒を想像しますが、意外なことに無色透明。甘いミルクの香りを感じるのに、味わいはすっきりと辛口で、アルコール度数は20度と高めのスピリッツです。「たっぷりのクラッシュアイスに注いでロックで飲んでもいいですし、アイスコーヒーや牛乳で割ってもおいしいですよ」と、友兼さんは太鼓判を押します。
 
(※)チーズ製造の副産物。生乳成分から乳脂肪とカゼインを取り除いたもので、乳清やホエイとも呼ばれる。

北海道が誇る農畜産物をおいしいお酒に

さらに、友兼さんは、「お酒という商品を通して、北海道の農畜産物の普及・消費促進、その先には地域貢献を目標に、社員一丸となって商品の製造に取り組んでいます。お酒造りに最も重要な安全・安心な原料を作ってくださる生産者の皆さまには、感謝の気持ちでいっぱいです。生産者さまから引き受けた作物を、責任をもっておいしいお酒にするのが私たちの使命。多くのお客さまに、当社の製品を知っていただけたらうれしいですね」と、やわらかい笑顔の中にも熱い思いをのぞかせる友兼さん。「これからも北海道産原料にこだわって酒造りに取り組みます。やはり、お酒は喜び多き場に欠かせない存在であってほしい。そういう気持ちで造り続けていきたいと思っています」と、「喜多里」を手に語る岩崎さん。最後に「日本全国の方に、北海道が誇る農畜産物を原料としたお酒をぜひ味わっていただきたいです」と、お二人は声をそろえました。
 
90年の時を経ても受け継がれる、「北海道の農業に貢献したい」という同社の思いにふれ、お酒造りもまた北海道が誇る農畜産物とともに歩んでいることを、改めて実感しました。
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