北本英彦さん
(JAめむろ)
農家の時計

農家の時計 農家の時計

今回の農家さん

北本 英彦さん(JAめむろ)
静岡県出身。東京農業大学を卒業後、2008年に芽室町に移住し就農。2023年に「芽室町生食スイートコーン生産組合」の副組合長に就任。現在は、スイートコーンのほか小麦、てん菜、じゃがいも、枝豆、小豆、にんじんなどを栽培。

JAめむろの特産物
『スイートコーン』とは?

十勝平野の中央部に位置する芽室町は、40年以上前からスイートコーンの産地として知られ、現在は全道一の生産量を誇ります。約70戸の生産者で組織される「芽室町生食スイートコーン生産組合」では、一粒一粒がやわらかく、ジューシーで甘い果汁が特徴の『ゴールドラッシュ』をメインに生産。収穫期は例年7月下旬から8月下旬で、ひと月の間に約230万本ものスイートコーンを出荷しています。
同組合では、スイートコーンの鮮度と品質を最優先に、収穫後は鮮度保持のため真空予冷をかけて輸送、一部では飛行機を使った空輸をするなど、高鮮度で消費地に届けるための体制を整えています。出荷先のほとんどが道外で、関東や関西、沖縄など日本全国に出荷されています。
 

■北本さんの1日(8月上旬の一例です)

収穫は、夜明け前の
朝4時から

スイートコーンの最盛期の一日は早く、朝4時から収穫が始まります。その理由は、鮮度が落ちるのを防ぐためなのだそう。「明確な時間は決まっていませんが、朝どりは組合で決められたルールです。日が昇って気温が高くなってくると、鮮度が一気に落ちるので、家族4人で必死に手でもいでいきます」。
さらに同組合では品質を重視するため、1本の茎に2〜3個の実ができても、一番果(最初になった実)のみの収穫にこだわっています。
「二番果以降は、どうしても品質や食味が一番果よりも劣ってしまいます。消費者の皆さまに品質が低いものを届けることは、生産者としてのプライドが許さないんです」と北本さんは力を込めます。収穫しなかった二番果以降の実は、茎とともに畑にすき込み、肥料として活用されます。
収穫後は、お昼頃までスイートコーンの選別作業を行います。一つ一つ重さを測り、Lと2Lに選別をして箱詰めし、13時にはJAの施設に出荷します。
 

芽室町産スイートコーンの
おいしさが就農を後押し

静岡県出身の北本さんが、北海道での生活を始めたのは、大学時代。夏は涼しく、食べ物がおいしい北海道の生活に魅力を感じていたのだそう。ところが道内での就職先が決まらず、卒業後は実家に戻り公務員として働いていました。
「当時交際中の妻が、夏になると芽室町の実家でとれたスイートコーンを送ってくれたんです。職場に持っていくと、あっという間になくなりました。その光景を見て、芽室町産への信頼や支持を実感したことも就農の後押しになりました」
卒業から5年後、交際していた紀恵さんとの結婚を機に、紀恵さんの実家に婿入りし、就農しました。
「今でも当時の上司にスイートコーンを送っていますが、すぐになくなってしまうので、自宅にも送ってほしいと頼まれます。鮮度と品質にこだわっているので、収穫してから2、3日後に届いても、芽室町産はおいしいと喜ばれています」

 

品質の良し悪しが決まる、
発芽時期の作業に苦労

北本さんは、約1haの畑でスイートコーンを栽培しています。「以前はほかの品種も作っていましたが、今では『ゴールドラッシュ』1本。知名度の高さとおいしさで、消費者の皆さまからの人気も高い品種です」と説明します。
スイートコーンの種まきは5月中旬頃で、北本さんはスイートコーンが芽を出し始めた幼い時期が最も気を使うといいます。
「種を植えた後、畑の表面に低温や乾燥を防ぐためにビニールシートを張るのですが、芽が出てきたら穴を開けて、ビニールから出してあげる必要があります。そのままだとせっかく出た芽が日光で焼けてしまうんです」
一見すると地味な作業ですが、スイートコーンの品質を左右する重要な工程で、朝日が昇る前から一つ一つ手作業で行っているそうです。
「スイートコーンの良し悪しは、発芽の状態で大体決まってしまいます。焼けてしまうといい実にならず、寒さに当たってしまうと実がつきません。穴を開けるタイミングが肝心で、自分が作っている作物の中で一番手間がかかっていると感じます。それでも手をかけるのは、自分が作るからには品質のいいものを提供したいという思いです」
畑では例年7月下旬から収穫が始まり、お盆前に終了します。ところが近年は、温暖化の影響で収穫時期が早まる傾向にあり、作業の調整が年々難しくなっているそうです。
「今年は、は種日を遅らせたにもかかわらず、予定よりも1週間早く収穫が始まりました。そうした中、私たちの畑を一軒一軒見回って、収穫適期などのアドバイスをしてくれるJAの担当者は、私たち生産者にとってなくてはならない存在です」

 

寒暖差が生む自然の甘みを
味わってほしい

スイートコーンの食べ方について北本さんは、「茹でるのが一番!」と太鼓判を押します。「余ったら冷凍しておき、コーンポタージュにするとおいしいです。自分が唯一作る料理なのですが、娘が小さい頃に作ったところ、大喜びで食べてくれた思い出の味でもあります。材料は潰したスイートコーンと牛乳のみ。調味料は不要です」。
スイートコーンは、生産者にとっても夏の訪れを感じる特別な作物という北本さん。「全国の皆さまが思い描く、This is 北海道の環境で育った夏の風物詩・スイートコーンを、収穫時の鮮度そのままにお届けしています。関係機関のご尽力もあり、スーパーやふるさと納税など手に取りやすい環境も整っています。芽室町は昼夜の寒暖差が大きいため、甘みが強いのが特徴です。芽室町産のスイートコーンを見かけたら、ぜひ手に取って食べてみていただきたいです」と力強く語ってくれました。