Vol.1 和寒産
越冬きゃべつ
北海道の星みっつ旬食材
生産者の思いがつまった北海道産農畜産物をこよなく愛するシェフが、いままさに旬を迎えている道産食材をピックアップ。星三つクラスのおいしさをより際立たせる調理のヒント、オリジナルレシピなどを紹介します。
vol.1
和 寒 産
越 冬 き ゃ べ つ

和 寒 産越 冬 き ゃ べ つ

雪が降る直前に収穫したきゃべつを雪の下で保存し、その後、機械で掘り起こして出荷する越冬きゃべつ。寒暖差の大きい気候風土の中、糖類の甘味成分、グルタミンなどの旨み成分がアップし、越冬することによって、甘味、旨味が増します。JA北ひびきの特産品です。

眠れる雪の下の
葉野菜

生まれ故郷の札幌で、地域に根差した一皿を提供しようと、私がシェフになったのは約15年前。和寒産の越冬きゃべつは、毎シーズン使っています。冬に出回る野菜は、いもやごぼうといった、どちらかというと重めの食材が多いもの。そこにきゃべつが加わると、料理の幅が広がり、冬が来るたび助けられています。

 

野菜を雪の中で越冬させる知恵は昔からあり、家庭でもよく行われてきました。凍ってしまう手前ギリギリのところで保存できれば、野菜の糖度は増し、シャキシャキと歯切れも良くなります。食べるにはいいことずくめですが、そこに至るまでは大変なんです。

 

約20年前、道東の友人の家に遊びに行った時のことです。そのまた友人の農家のお母さんがごはんを作ってあげるから、外で野菜を掘ってきてと。見渡す限りの雪原に、風に揺れるポールが一本。その辺りに埋まっていると聞いたのですが、収穫はゼロ。震えながら掘って掘って掘り続け、1mの深さの所でビニール袋に入った野菜を見つけた時は、ほっとしました。

雪が多い和寒町では、きゃべつの上には雪が50cm以上積もるため、雪かきは油圧ショベルで行っているそうです。きゃべつは傷つきやすい作物ですから、雪中から姿を現した後、拾い上げる作業は、生産者さんにバトンタッチ。1個3kg級の大物も珍しくなく、しかも、気温はマイナス20度という極寒の中での手作業。本当に頭が下がります。

 

自然と人の協同作業によって市場までやって来る越冬きゃべつは、長い間雪の下で眠っていただけあってとても色白。甘い香り、厚い葉が特徴で、おいしいんです。生のままかじってみると、特に葉脈の部分は噛むほどに甘味が弾け、わずかにピリッとします。この刺激は、加熱すると消え、逆に甘さが前に出てきますので、越冬きゃべつは敢えて少し焦がして焼き、甘みと焦がした苦みのコントラストを楽しんでもいいですね。ぜひ、試してみてください。