「二度目の旬」の
個性を生かす
本州では、いもといえばさつまいもですが、北海道ではじゃがいもです。私が子どもの頃のおやつは、祖母が蒸かしてくれたじゃがいもでした。皮が少しめくれたアツアツのじゃがいもに塩をパラパラ、バターをたっぷり。甘く、ほっくりしたあの味は忘れられず、おいしいものの原風景として記憶に刻まれています。
よくねたいもシリーズが登場したのは11年前。私は、コマーシャルを見て知りました。よくねたいも=眠らせて貯蔵するという意味で、家庭でもとてもわかりやすかったと思います。「旬は、二度来る。」というコピーも、とてもいいですね。
じゃがいもは品種によって味が違いますが、実は、掘りたてか否かも、調理する際には考慮しなければならないポイントです。新じゃがは、ホクホク感があり、土の香りがして、デンプン質が多いもの。一方、よくねたいもは寝ている間にデンプン質が糖に変わるため、甘味が強く、コクもあり、ねっとりしています。その違いから、私は、いも餅は新じゃが、ニョッキはよくねたいもと使い分けています。
いも餅は重くなりがちな料理ですが、新じゃがで作ると、いもが持つデンプン質のおかげで、練り込むデンプンは少なくて済み、軽やかに仕上がります。ニョッキは、私は口の中でホロホロと崩れていく儚さがあるものが最高と考えているので、デンプンは使わず、小麦粉でまとめます。だから、いものデンプン質は必要なく、コクや素材の個性がより前に出るよくねたいもがいいのです。
よくねたいもは数種類ありますが、よくねたいも メークインは、煮込みやバターコンフィのほか、ひと口大に切ったものをアサリの酒蒸しに入れてもおいしいです。よくねたいもの甘味には塩味があうので、塩辛、珍味なども。ご家庭でも使いやすいですよ。
私の料理は、素材を生かすことを大切にしていますので、素材が良くないとおいしくなりません。そのために産地や品種、作り手と向き合いながら、時には店で熟成作業も行っています。とはいえ、味や風味を維持したまま貯蔵・熟成することは簡単なことではなく、よくねたいものように調整された空気の中で管理できたら、どれほどいいだろうと思います。じゃがいも同様、私も、恵まれた環境で熟睡できるよくねたいもが羨ましいです。