Vol.15
特別篇
空知産新生姜
北海道の星みっつ旬食材
道内各地の生産者と太いつながりを持ち、北海道の農を熟知する塚田宏幸シェフが、今こそ味わいたい、おいしさ星三つクラスの食材を毎回ピックアップ。調理のヒントを中心に、生産者や食材にまつわるエピソードなどもお伝えします。
vol.15
(そら) () 産 新 生 姜

[ruby t=空 r=そら] [ruby t=知 r=ち] 産 新 生 姜

北海道で新生姜が生産されていることをご存じですか。札幌と旭川の間に広がる空知地方にあるJAびばい、JAそらち南の生産者が、その先陣を切っています。収穫間近の9月中旬なら新生姜が植わっている様子が見られると聞き、さっそく美唄市へ向かい、生産者のお二人に会ってきました。

大きく育て!
地域のチャレンジ。

9月も中旬というのに、気温が30度近くまで上がったその日。私は、美唄市で空知産新生姜を生産している田中雅人さん(写真左:JAびばい)の畑を訪ねました。メッシュヘアにロックTシャツ姿がよく似合う田中さんは、2014年から新生姜を生産している地元の若き先駆者。一緒に待っていてくれた片山肇さん(写真右:JAそらち南)とは、ふだんから気の置けないお付き合いをされているようで、おふたりは笑いをまじえたトークで温かく迎えてくれました。

新生姜は、高知県や熊本県が産地として有名なことから、暖かい土地のものというイメージがあります。その作物の栽培を始めたきっかけ、栽培してみた感想から聞いてみました。
 
「JAびばいから新生姜を作ってみないかと声をかけられた時、自分も新生姜を北国で?と思ったんです。ところが、やってみたら面白かった」と田中さん。今年、新生姜を栽培して2年目という片山さんも、田中さんの話にうなずきながらこんな話を披露してくれました。「1年目は思うままに作りました。オフに九州の産地に視察に行き、自分としてはまあまあと思える出来に作れた新生姜の写真を見せたら、早い話が鼻で笑われた。実際、九州の新生姜はサイズが大きく、硬さも違うんですよ。それでなにを~!と(笑)。スイッチが入ったね(笑)」。

ハウスの中は屋外より暑く、湿気も高いように感じます。「新生姜の栽培は30度から35度が適温とされています。他の作物は25度が目安だから、最初はこの温度管理に戸惑うんですよ」と片山さん。乾燥も避けなければならず、高温多湿が奨励されているものの、湿度が高すぎても良くない。湿度との闘いもあるそうです。そこで田中さんがポケットから取り出したのが、スマートフォン。「僕は、天気アプリで温度、湿度を調べ、このハウスの温度と湿度を高知と同じになるように調整しています」と、企業秘密?を教えてくれました。

栽培は、5月10日頃、親の生姜を土に直接植えるところからスタート。親の生姜から芽が出るまでの約40日間は温度管理と水やりに細心の注意を払い、芽が出始めたら、地表から芽が顔を出さないように土を盛ります。「土を盛るのは、水分補給の意味もあります」と田中さん。片山さんも、「僕は、地植えしないでポリ鉢に入れて試してみたんです。その結果、保水力のある土を使わないと、芽が出ないことがわかりました」。おふたりによると、新生姜栽培は情報が集約されていないため、たい肥をどれくらいやればいいのかも手探りの連続とか。こうしたお話を聞けるのも、産地を訪ねたからこその収穫です。

「そろそろ、掘ってみませんか」。田中さんが持ってきたスコップを私に差し出しました。新生姜の畑に入ったのはこの日が初めてですから、掘り起こすコツもわかりません。おふたりに私の胸元あたりまで伸びた葉を押さえていただき、このへんですか?と確かめながらスコップの先をおそるおそる土に差し込もうとすると、「親の生姜に当たらないか、様子を探りながら、スコップを入れてください」と田中さん。茎が密集し、土が盛り上がっているあたりの外側に沿ってスコップを入れると、土がボロリと分かれ、ごろりとした新生姜がいくつも連なって姿を見せました。その傍らに控えめに寄り添っているのが、親の生姜だと田中さんが教えてくれました。「あー、たくさん付いてるね」と、片山さんもうれしそうに新生姜の親子をみつめていました。

土を払い、根を切った新生姜をひとつ、そのままかじってみました。大きなところは辛みが強く、小さなコブ状のところはシャリシャリして大根に近い感じで、ほどけていくような食感があり、ピンク色の鱗片はシャクシャクした葉野菜に似ているというように、場所によって持ち味が違うのですが、全体にみずみずしく、ジューシーです。淡い味わい、穏やかな香りも、生姜にはない、新生姜ならではの個性といっていいでしょう。新生姜は、生姜のように寝かせて出荷するのではなく、掘り起こしたら即出荷。旬がとても短い食材ですから、「旬を料理にどう閉じ込めるか」を常に考える料理人には、腕が試されるような、ちょっとこわい食材です。

私が新生姜にかじりついていると、田中さんから「薬味以外の食べ方を考えていきたい」という言葉が聞こえてきました。私は長い間、新生姜を薄くスライスして砂糖に漬け、ピクルスのように使っていますが、塩もみにしてすぐ使っても良さそうです。熱を加えると香りが飛んでしまいそうなのでゼリー寄せにしてみようかとか、にんじんのスープに新生姜を泡状にしたものをのせてみようかとか、イメージはどんどん広がります。ご家庭では、定番の生姜焼きはもちろん、新生姜に軽く塩をして漬けたものを肉で巻いて焼いてもおいしいと思います。新生姜を塩と砂糖で発酵させて調味料を作れば、旬が短い新生姜を年中楽しめますし、醤油や麹を足しても良さそうです。

こうして産地を見て、生産者の方と話して、とれたばかりの恵みを口にすることは、私自身にたくさんの刺激を与えてくれます。「大きく育てることが目標。3年目で、理想の大きさに近づくことができた」と語る田中さんの自信、「先行するJAびばいの生産者に学びながら、空知産新生姜を育てていきたい」と目を輝かせる片山さんの意気込みも、私のエネルギーになりました。空知産新生姜の生産は、両JAのチャレンジです。私も精一杯応援させていただきたいと思います。多くの方に食べてもらえるよう、一緒に頑張っていきましょう。

 
> JAびばいホームページ
> JAそらち南ホームページ

「空知産新生姜」のみずみずしさや、レモンに通じる爽やかな香りが立つように、泡状にして「旬」を閉じ込めました。「空知産新生姜」の香りとほのかな刺激がサツマイモの甘みを引き締めるこの前菜は、シェフが指揮を執る「ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ」でお楽しみいただけます。
●こちらの前菜は対象メニューのみに付きます。店頭にてご確認ください。

※写真はイメージです

「空知産新生姜」をストレートに生かそうと、あえて食感を少し残し、シナモンなど数種類のスパイスを絶妙に調合。ピンクのグラデーションが爽やかな印象を与える、大人向けの自家製ジンジャーエールです。「ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ」の食事にも合うよう、甘さは控えめにしています。
●提供期間/10月2日(金)~31日(土) ●660円(税込み)

※写真はイメージです
 
販売期間、販売店舗などの詳細情報については、下記のウェブサイト、SNSよりご確認ください。
 
> 北海道の農が見える、お料理とワインのお店
「ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ」

「空知産新生姜」の新鮮な香り、まろやかな味わいを活かせるように、蜂蜜をアクセントに加えました。「空知産新生姜」を一晩漬けこんだ蜂蜜水も生地に練り込み、香りを移すなど、風味が逃げない工夫をしています。スープやシチューと合わせるのもおすすめです。「ブーランジェリー コロン」全店で期間限定発売中です。
●1個281円(税込み)

※写真はイメージです
 
販売期間、販売店舗などの詳細情報については、下記のウエブサイト、SNSよりご確認ください。
 
> ブーランジェリー コロン